月から出た星の人
月から出た星の人
『冬と春の合間』からピアノが漏れ聞こえる。人狼は、シャガールの絵そっくりの月が窓から昇り始めるのに気づいた。
年を取った星の人が、赤い帽子をかぶってやってきて、ひらりと月から舞い降りた。仰天して見ているうちに、月に一礼して、帽子から氷の玉を取り出す。氷玉はそのまま、光の球になって並木通りの街灯をひとつひとつ点した。ついていくと、木々の寒々とした枝が舗道に影をおとしていて、人狼は悲しくなった。星の人がほっほっほーと笑い声をあげた。背中に大きなふくろをしょっている。
耳を澄ましてみると、クリスマスソングがきこえてきた。人狼が元の場所へ戻ってみると、お月さまは空高く登って、北風が雪を降らし始め、街の時計がディンドン鳴った。