表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/41

赤い世界編3



集は一心不乱に木刀を振っている。


「あはは!見ろよ!あいつあんな頑張ってるのに雑魚なんだぜ!」


周りの視線など気にせずに集は木刀を振り続ける。

集が黙々と木刀を振っていると、何が気に入らなかったのか、原木 正也が集の前へ割り込んでくる。

慌てて木刀を止める集に、にやりと笑って言う。


「俺と試合しようぜ」


「……」


「逃げるなよ無神~」


「……いいよ」


「ひひ」


正也は奥の方へ行き、戻ってくる。


「師匠の許可は貰ったぜ」


集と正也は試合用の部屋へ移動する。

部屋の中央で二人が対峙し、隅に多くの生徒が広がる。


「魔力解放」


「……魔力解放」


互いに模擬刀を構える。


「じゃあいくぜ」


「ああ」


「はあ!」


正也が上段から振りかぶる。

集はそれを真っ向から受け止めるが、拮抗もせず弾かれる。

両手が痺れる。


「はあ!、はあ!、はあ!」


集は相手に攻撃させないように攻め続けるが、ことごとくを弾かれる。


皆が見ている。


数人か女子もいる。

このままカッコ悪いところを見せ続けたくない。

集は覚悟を決めた。


練習中のあの技を、今度こそ……


模擬刀を片手に持ちかえる。


「おいおい、ふざけてんのか?」


正也が嘲るが、集は意に介さない。


「………」


正也が喋ろうとするが、集の雰囲気がそれを許さない。

全てを見透かすような集の瞳に、女子達が頬を染める。


「うわぁぁぁ!」


正也がやけくそでうちかかる。

今の超常的な雰囲気を醸し出す集へうちかかるのは、やけくそでしか無理だった。

もちろん当たるなどと思っていない。

どのような反撃が来るのか、怖くて仕方がない。


だが、予想を裏切り、正也の模擬刀はあっさりと集の右肩に到達した。

集は微動だにしなかった。

ただ超常的な雰囲気を出しているだけだ。


集は崩れ落ちる。

雰囲気はもとに戻っている。


「ぷっははははは!!」


誰かが笑い、それにつられて皆も笑った。


集は恥辱に震えるしかなかった。




∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈



ガサゴソっ


「はっ!寝てた!」


珍しく夢に白い蛇が出てこなかった。

どのくらい寝ていたのか、ガサゴソと言う音で目が覚めた集は、近くにゴキブリを発見した。

正確にはゴキブリではないが、ゴキブリそっくりだ。体は小さい。

集に近づこうとしているが、魔力の壁に阻まれて近づいてこれないらしい。


夏波のそばにもガサゴソ動いているやつを何匹か発見。


「夏波!起きろ!」


慌てて夏波を揺り起こし、周りを確認させる。


「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」


夏波は悲鳴をあげて洞窟の外へ逃げた。

集は追い掛けてすぐに捕まえた。


ふと視界の隅に先程のカマキリを見つけた集は、夏波をつれて近くの岩場に隠れる。

カマキリは集達に気付かず、悠々と黒い大地を闊歩している。

夏波は黙っている。


「大丈夫か?」


無声音で話しかける。


「はい、大丈夫です」


「動くなよ」


「はい」


しばらくたち、カマキリが去ったことを確認した。


「よし、もう大丈夫だ」


「………」


「おい?」


無声音で問い掛けるが、夏波はただ虚空を見つめている。


「おい?」


返事がない。


「大丈夫か?」


肩を揺すると、ころんと、


――目玉が落ちた。


「え?」


固まる集。


耳からは触角のようなものが見える。

集の思考が停止する。

目玉があった空洞から、先程のゴキブリが出てきた。

耳からも出てくる。

恐ろしくなった集は、声にならない悲鳴をあげてその場を離れた。


しばらく走っているうちに、心を無理矢理落ち着かせた。

平常心を失っていては、死ぬ。

集の心を落ち着かせたものは、皮肉にも恐怖だった。


少し離れたところに狂獣がうようよいる。

集には気付いていないようだ。

ふと集の目の前の地面が割れる。

反射的に飛び越す集。

着地した瞬間、後ろの地面からスティックのりのような生物が飛び出した。

口が円状になっており、360度全てに歯がびっしりと生えている。

スティックのりは、着地すると同時に体を縮ませ、バネのように飛んでくる。


突如左から何かが横切り、スティックのりが切断される。

カマキリと目があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ