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赤い世界編2

「落ち着け!誰かこの中に纏者はいるか!」


「俺、纏者だけど」


「私も纏者です」


「3人か。遠くに狂獣がいる!俺が殺るから、二人は他の人を守れ!すぐに戻る!」


「あの、騎士団の方ですか?」


「今はそんなことに答えている暇はない!」


そう言って20台らしき男性が狂獣へ向かって駆け出す。


「私達はここで待ってましょう」


「ああ」


もう一人の纏者である女性と頷きあう。

狂獣へ向かった男性は、ある程度近づくと『飛斬』を放ち、1体の狂獣を真っ二つにした。

すると他の狂獣が男性へ走り出した。

男性は集の知らない技等を多用し、あっという間に狂獣を全滅させた。


きらきらと光る狂獣の残滓を背景に佇む男性に、2メートル程のカマキリが近づく。

男性は『飛斬』を飛ばすが、避けられる。

カマキリがオレンジ色の鎌をゆっくりと振り上げる。

鎌がオレンジ色に光り始める。

そして、カマキリが消えた。

男性は上半身と下半身が切り離され、息絶えた。

オレンジ色の軌跡を残し男性のはるか後方にいるカマキリは、次にこちらを睨む。


「ぎゃあああぁぁぁぁ!!」


一人発狂して逃げるように駆け出す。

地面から突如現れた巨大な芋虫のような生物に飲み込まれた。

それを見ていた他の皆は、纏者2人にすがるような眼差しをむける。


「いやいや、無理です」


明らかに集より強い男性が瞬殺されたのだ。無理に決まっている。


「ですよね?」


集は隣でがくがくと震えてうずくまっている女性に同意を求めるが、無視される。


「なんとかしろよ!お前余裕そうじゃねーか!」


何か叫んでいる男を無視。

生き残る方法を考える。


「ばらばらに逃げましょう」


全滅するよりかはいいだろう。

突然、集のそばで何か叫んでいる男の上半身が吹き飛んだ。


「きゃあああぁぁぁぁ!!」


女性の悲鳴を皮切りに、皆散り散りに逃げる。

多くの人がなんらかの生物により食べられていく。

阿鼻叫喚が聞こえてくる。


集は今目の前にいるカマキリの真後ろにいることに撤する。

カマキリは逃げた人の多い方へ向いている。

集はその後ろにいるが、ここでカマキリを攻撃するか、じっとしているか。

後者を選んだ。

今生き残っている人数は、集をいれて5人。


カマキリが動いた。

みるみる集から離れていく。

集は魔力を解放して逆方向へ走る。

途中で逃げている女子高生がいたので、拾って背中に抱えて走る。

しばらく走ると、小さな洞窟が見えてきたので、ひとまずそこに逃げ込む。


「あの」


背中の女子高生がおずおずと声をかける。


「何?」

「その、ありがとう、ございます」

「いいよ」

「その、他の人達は……」

「…………」


沈黙で察したのか、黙り混む。

集は女子高生を下ろし、魔力を解除してそこら辺に座り込む。


「これから、どうするんですか?」

「さあね」

「さっきのは、狂獣ですよね」

「うん」

「ここは、どこなんでしょう」

「洞窟じゃない?」

「いえ、そうじゃなくて」

「………」

「……分からない、ですよね」

「うん」


集はおもむろに立ち上がり、魔力を解放する。


「纏者なんですか」

「そうだよ」

「頼もしいです」

「……照れるな」

「本当に頼もしいです!」

「そうか。ちょっとそこで待ってて」


そう言って洞窟の奥へと進む集。


「お、おいてかないでください!」


女子高生が慌てて追い縋る。

振り返って集が言う。


「そう言えば、名前は?」

「相原 夏波です。あなたは?」

「無神 集。よろしく、夏波」


女子高生、夏波は頬を僅かに染めて微笑む。


「数歩だけ入るだけだから、待ってて」

「分かりました」


夏波に微笑んで再び奥へ向く集。

奥は真っ暗だ。

数歩先まで魔力の青白い光で照らされる。

不気味な洞窟に5歩進んだとき、ひゅんと何かが高速で集に飛んできた。

それは魔力の壁にぶつかりべしゃりと潰れる。


「ひっ」


遠くから見ている夏波が悲鳴をあげる。

さらに2歩進むと、同じものが数え切れないほどとんできた。

殆どはべしゃりと潰れるが、潰れないものはなんとか地面で波打って集に近づこうとしている。

ミミズのような生き物だった。

吐き気を催すほど気持ち悪い。

集は速足で夏波のもとへ戻った。

入り口の辺りは安全地帯なようだ。


「奥に行くのは止めといた方が良さそう」

「そう、ですね」

「……お腹すいた」

「あ、クッキー持ってますよ」

「いや、いいよ」

「受け取ってください。集君がいなければどうせ私死んでますし」

「分かった。ありがとう」

「はい」


夏波が渡したのは小さな小袋のクッキーだ。

それでも非常にありがたい。

粉々に割れていたが、おいしかった。

不意にまたいつもの目眩がした。

数秒でおさまる。


「あのミミズみたいなの食べれると思う?」

「絶対に無理です!死んでも食べません!」

「だよね」

「もう絶対絶対嫌です!」

「あはは、分かった」


不意に地面が揺れる。


「あれ?地震ですか?」

「さあ」


揺れはどんどん大きくなる。


「なな何が起こっているんでしょう」

「さあ」


夏波の声が可哀想なほど震えている。

集は外へ出てみる。


「なんじゃありゃ」


そこには大きなカメムシが歩いていた。

大きい。

山のように大きい。

全長1キロメートル程だろうか。

赤い空を埋め尽くす黒い体。

それがゆっくりと集の頭上を通り過ぎる。


「凄いですね」


いつの間にか集の隣に並んでいた夏波が唖然としながらも言った。


「中に戻ろう」


集は先に洞窟へ戻る。

続いて夏波もやってくる。


「ふわぁ~」


夏波が欠伸をした。


「ちょっと寝て良いですか?」

「眠いの?」

「すみません。寝不足で」

「いいよ」


夏波は体育座りで寝た。

すーすーと気持ち良さそうに寝ている夏波をみていると、集もうとうとしてきた。

気付かぬうちに、集は壁にもたれ掛かるように寝ていた。

魔力は解放したままだ。



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