『攻撃命令』
原題は犯行のネタバレとなっている。倒叙ものだから大した問題ではないけれど、そうでないに越したことはない。邦題の方がいいと思う。どうやって攻撃命令を出したかが、ひとつのポイントになっているからだ。
演じる映画マニアの心理学者が犯人で、映画にまつわるくすぐりが満載だ。合言葉は「バラのつぼみ」だし、イヌの名前はローレルとハーディだ。犯人役のニコル・ウィルスンは「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」にも主演しているらしいが、あまり記憶にない。「優雅な生活」の方なら繰り返し洋画劇場でやっていた記憶があり、こっちかと思い込んでいたがどうやら違うらしい。
事件とはほとんど関係ないけれど、コロンボが熊のぬいぐるみを抱きながら第一発見者に聴取するシーンが好きだ。そのぬいぐるみは発見者の心の友であり、コロンボと同一視させるように見える。あと、コロンボがヒントをつかむイヌの調教師の女性がかっこいい。トリシア・オニールという俳優らしいし、どこか他でも見た記憶があるが、はっきりしない。
コロンボが疑いを決定づけたのは、犯人がイヌたちの助命嘆願をしなかったことだろう。動物を凶器として使うことも卑劣だろう。その分コロンボの矛先も鋭くなる。玉突きをしながら追い詰めるシーンも緊迫感がある。しかし、いつものように状況証拠は次々と見つかるが決定的証拠はない。そうなると自分をおとりにするしかない。「美食の報酬」と同じやり方だけれど、あのときよりも正鵠を得ているように思えた。