『美食の報酬』
今回は邦題が面白い。原題が「グラスの下の殺人」といったところでいまひとつなのに対して、この邦題は、皮肉たっぷりでいい。ルイ・ジョーダン演じる料理評論家が殺したレストラン経営者が人望が厚く、彼を殺した犯人を捕まえるべく奮闘しているコロンボを、業界の人たちがよってたかって美食攻めにするのだ。美食の報いで殺されたわけではなく、コロンボが捜査の報酬として美食を得るというものだ。
トリックはイマイチで、犯人が最初と同じ手口でコロンボを殺そうとするところがミソだけれど、犯人もこの程度で追い詰められるとはなかなか思い難い。それよりもやはり、おいしそうな料理の数々や、コロンボの洒落たコック姿やイタリヤ語通訳振りなどの、枝葉が面白い。
毒薬が河豚の毒なのはいいとして、河豚として映される映像が河豚ではないのがご愛嬌。テレビ局の美術さんはもっとがんばるべきだった。まあ今ならこんなこともあるまいが。当時のアメリカでの日本理解が低かっただけだろう。逆に芸者の描き方はこんなものだろう。一様に口を覆って笑う辺り、パロディだと思えば笑える。そういえば、コロンボものの犯人に日本人または日系人が一人もいないのも、根は同じかもしれない。