『愛情の計算』
これはよくできた邦題だと思える。原題は「健全な肉体に健全な精神が宿る」のもじりだろうか。
今回の見所は、何と言ってもロボットのロビーが登場することだ。ロビーを見ているだけで楽しい気分になってしまうので、上手い具合にミスデレクションの役割を果たしている。しかし、事件簿の本篇はもう一つと言わざるを得ない。オスカー俳優のホセ・ファーラーが犯人役だけれど、かすんでしまう。父親の愛情を利用するコロンボのやり口はいつものやり口に違いない。支配される息子には感情移入できるけれど、残念ながら彼は犯人役ではない。ラストの葉巻のシーンは「別れのワイン」の二番煎じだ。マッチの手がかりは秀逸だけれど、コロンボの手がかりではないように思える。普通のミステリ向きのトリックと筋立てと考えられる。もしそうならけっこう面白いものに仕上がったかもしれない。
ロビーを出しておいてよかった。全体的に上から目線を感じてしまうのは私だけかもしれない。父親の愛と言うテーマは私にはあまりしっくり来ないものだ。これでもまだ控えめな表現だろう。父親が息子を愛しているわけがないとさえ思う。百歩譲って愛していたとしても愛し方が完全に間違っているのは間違いない。だからこの犯人にはまったく同情ができない。コロンボのやり口も納得できない。こんな簡単に犯人が屈服するとは私にはどうしても思えないからだ。