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ヴァルテンブルクの末裔  作者: 銀月
3.シェンハーゲン事件
21/27

 5年前の忘れられないその日から遡ること1ヶ月。


 とある魔術師の塔から地響きのような振動が起こり、不気味な唸りが聞こえたらしい。

 塔の近隣の住民は魔術師が何をしたのかは知らなかったが、「何か」があったのだろうということはすぐに察知した。そして、「何か」が起こった魔術師の塔にうかつに近づくことの危険を十分知っていたので、そのまま誰も近づくことなく、ほったらかしにしていたのだと言った。

 事実、その魔術師の塔には、魔術師でなくても感じるくらいに濃い魔法の気配が漂っていたのだ。


 魔術師の塔の内部は、一瞬で数十年の時が過ぎたかのように荒れ果てていた。

 内部に残されていたものはそれほど多くはなく、ただ、地下に作られた魔術の実験室のような部屋にはおびただしい血痕と壊された魔法陣、変わり果てた姿の塔の主が残されていた。そして、魔法陣の後には、近寄るのを憚るほどによくない……一言で言えば邪悪な気配が残されていた。

 また、わずかに残っていた塔の主である魔術師の覚書や壊された魔術陣を調べた結果、魔術師はなんらかの召喚実験を行おうとして失敗したのだということも伺えた。


 そして、調べた結果とその魔術陣……召喚のための魔術陣に残された気配から、同行した魔術師の見立てでは、塔の元主は九層地獄界や奈落界のような、下方次元と呼ばれる異界のどこかに向けて門を開こうとした結果について……「おそらく、残された気配から察するに下方世界のどこかの次元に繋がったけれど、意図しないものを呼び寄せた結果、命を落とすことになったのだろう」ということだった。


 また、塔の主である魔術師には弟子が一人いたはずだが、その行方はわからなかった。生きているのか死んでいるのかすらも、塔に残された痕跡からははっきりしなかった。




「で、その魔術師の弟子は、間違いなく生きている」

 ユリウスはきっぱりと断言した。

「なぜなら、奴がその呼び出した何かに取り込まれたのか取引したのか、自分の家族を生贄にした後に姿をくらましたことは間違いないことだからな。

 どういういきさつでかまでは知らない。だが“黒き炎”の教団を建て直し、“悪魔”をどうにかしようとしているんだろうとは思う」

「そいつ、どこにいるの?」

「そこまではわからねえよ。わかってたら、とっとと向かってるさ」

「湖の町の戦神教会は、聖女が建立したの。だから、他のどこの教会よりも、“悪魔”と教団についての記録は残っているはず。それに、シルヴァリィ様も何かを知っているわ。

 やはり、湖の町に急ぎましょう」


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