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1.ある古い物語より
古い、古い物語を語りましょう。
昔々、世界が混沌と暗黒に包まれていた時代、
己が慢心にまみれた力ある魔術師が、
奈落の底より“力ある存在”を呼び出しました。
世界を包む混沌と暗黒に紛れ、
魔術師と“力ある存在”は多くの魔物を従え、
自らの喜びのために大地を血と暗黒で染めあげていきました。
毎日襲い来る死の恐怖に脅え、
人々は絶望に打ちのめされていたのです。
しかし、光宿す者が立ち上がり、
魔術師と“力ある存在”へ戦いを挑んだ時、
神々の奇跡と古い魔法と秘密の技によって、
ひとふりの剣が鍛えあげられました。
光宿す者は、長い、長い戦いの末に、
いつしか“英雄”と呼ばれるようになり、
“英雄”の掲げたひとふりの剣は魔術師を打ち倒し、
“力ある存在”を奈落の底へ追い返したのです。
血と闇と嘆きは大地から払われ、
人々が己の影に潜むものを恐れることも無くなり、
再び世界は光を取り戻しました。
そして物語は唐突に終わりを告げる。
誰も“英雄”の行く末を知らず、彼を助けた3人の仲間についても、物語には語られていない。