第1話 殲滅完了
崩壊の日
そう名付けられた、正体不明のヒト型生物の大規模攻撃を受けた日本は2年余り経った今でも、元の生活レベルに戻るにはまだ時間が必要だった。
賑やかとは程遠い荒廃した町並み。
華やかとは言えない商店街。
立派には見えない民家。
美しいとはかけ離れた自然。
あの頃の日本とは考えられないなんとも殺風景な景観は絶望を俺たちにプレゼントするのであった。
俺、芽上 双は深いため息をつく。
ぶっちゃけた話、こうまでめちゃくちゃにされると元に戻す気力すら起きない。
ピンチだからこそとか、逆境だからこそとか、逆説的心理をいつまでも保てるほどのヒーロー気質は生憎持ち合わせていない。
かと言って、対コルト戦闘組織GANの所属する身であるので、諦める事は許されない。
俺は気を引き締め、腰に携えた"黒光剣"(ダークソード)を握る。
この剣を握る度に思うのだが、なんとも中二臭い名前なんだろうか。
こんなもの量産型対コルト専用剣でいいじゃないか。
そう、この剣はGANから支給される量産型対コルト専用剣である。剣の名前は"黒光剣"(ダークソード)といい、コルトを倒すための専用剣となっている。
こうまでコルトの侵略を受け止めきれなかったのは、武器の違いが大きな原因の一つと技術部の人間が言っていた。
日本にどこからか舞い降りた正体不明のヒト型生物コルトの強さは武器にあった。
その名を"黒光"(ダーク)。
この黒光という物質は大きな破壊力を持ち、
それを纏う剣を持ったコルトを前に、人間は為す術はなかった。
しかし、GANの技術部が総力をあげコルトの使う黒光を解析し、完全再現を実現することができた。
この実現により、人間による黒光の操作、それを元にした武器、黒光対策の防具、黒光の特性を生かしたアイテムが開発され、日本再建の大きな一歩となった。
俺の持つ"黒光剣"は黒光を元にした武器の一つで、コルトの使う剣を模式的に再現した対コルト用の剣である。
このような武器の開発で身体能力は劣るが、武器は同じ土俵に上がった人間はコルトを次々に撃退、殲滅。僅かながら、日本に希望の光が差し込んだ。
すると、ポケットの連絡用通信機器からGANの本部からのメールを受信した。
「はぁ?ここにコルト出現反応?」
思わず声に出して辺りを見回す。
俺は今、元市街地にいる。廃墟となった民家が立ち並ぶなんとも気味の悪い場所である。
俺は神経を研ぎ澄ませコルトの位置を把握しようとした。
「・・・・・」
全く異常は見当たらない。コルトの出現を示す機器の誤作動だろうか。
身を翻し、本部に戻ろうとした瞬間、背中に殺気を感じた。
ガキン!!
黒光剣同士がぶつかり合う、独特の金属音が鳴る。
「こちら赤帆隊 芽上双。コルト一体の出現を確認。殲滅します」
俺は連絡用通信機器を取り出し、慣れた動作で発見連絡を伝え、再びポケットに滑りこませる。
肌は黒く、一体ごとに違う縫い傷のようなものがあるのが、コルトの特徴である。
かなり戦闘力は高く、俺も何度か殺されかけたこともあった。
俺はしっかりと奴の剣の軌道を読み、受け止め、隙があれば切り込む。しかし、奴もしっかりと俺の切り込みを受け止め、斬り返してくる。
「くっ……」
この戦い方では駄目だ。いつか俺の体力が底をつく。
俺は戦い方を模索しながら、攻防を続けた。
俺はコルトの弱点を知っている。
それは、突然の変化だ。
俺は口元に笑みを浮かべた。
俺はあえて大きなモーションで剣を持っている右手を振り上げ、ここ一番のヘッドスピードで剣を振り下ろした………否、俺が振り下ろしたのは右手のみ。剣は空中に浮いている。
奴は意表をつかれたような表情。
俺は左手で剣を掴み、首に一閃。
奴は俺の大きな縦斬りのモーションをとったせいで、縦斬り防御の体制をとっため、横斬りには対応できなかったようだ。
「殲滅完了。」
俺は剣を鞘に収め、GANの本部へ向かった。
拙い文章ですが、読んで下さる方ありがとうございます。




