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里花ちゃん、君って一体・・・何をしたいのかな?

 放課後、部活前にスマホを覗くと里花ちゃんからメールが届いていた。


《今日部活が終わり次第、緋色んちで勉強会をします。翔も誘って参加しませんか? お待ちしております》


 勉強会? 部活後なんて随分と中途半端な時間帯。いつもなら、昼間の時間帯を使うのに。

 不思議には思ったけれど。


 里花ちゃんは緋色の同級生で、小1からの親友。

 小さい頃から、亮兄を筆頭に翔と兄のおれぐらいしか親しい人間はいなかった緋色に、初めてできた女友達。

 このまま亮兄だけに執着したままじゃ、将来どうなるんだろうと子供心に心配していたから、入学早々できた友達に一安心した。一人だったけど。


 それでも、緋色の世界は今までよりも広がったと思う。 

 緋色は里花ちゃんとよく遊ぶようになった。


 里花ちゃんのどういうところが緋色の心をとらえたのか。


 勉強を教えてくれるところとか? いや、勉強だったらおれも教えるし。


 優しいとか? おれだって優しいよ。言われることは何でも叶えてあげてるし。

 可愛がってるし、目の中に入れても痛くないほどかわいい。妹ってかわいいんだよね。特に、緋色は――― 


 面倒見がいい所とか? これはどうだろう? 

 おれだって、緋色のことはよく見ているし、でも、すべてを知っているわけじゃない。学校でどんなふうに過ごしているかなんて、クラスメートじゃないから、よくわからないし、女の子のことなんて特に。


 傍から見ていると友達というよりも、姉妹って感じがしないでもない。おれが教えてあげられないことを、里花ちゃんが細々教えてくれている、そんな感じがする。

 緋色自身に聞かないとわからないことだけど、仲がいいことに変わりはないから、いいか。


 これまで、亮兄のいないときは、おれたちが相手していた時間が減ってしまったのはちょっと。

 いや、かなり、寂しいけれど。

 翔はそれが悔しいらしい。

 里花ちゃんとは碌に口を利かないからね。

 大人げないよなぁとは思うけど、緋色を好きな翔の気持ちもわかるから、二人のことは黙認している。

 里花ちゃんも気にしている様子はないし。


 ユニフォームに着替えて、翔とふたりグラウンドへと行く途中、里花ちゃんからのメールのことを伝える。


「翔、緋色が勉強教えてほしいって。メール来てた」


「いつ?」


「今日部活が終わってからだって」


 メールの内容をわかりやすく要約するとこんな感じだろう。要するに緋色のための勉強会。里花ちゃんとは時々メールをしている。内容は緋色に関してばかりだけど。


「夜って、微妙な時間だな。宿題でわからないところでもあるとか?」


 翔も首を傾げている。


「里花は?」


「いるみたいだよ。勉強会だって」


「だったら、必要ないだろう」


「どうだろう? わざわざメールしてくるくらいだから。教えてほしいんじゃないのかな」


 とは、言ったものの勉強を教えてくれとは書いてなかったし、参加しませんか? って・・・どんな意味だろう? 教えてほしいに取れなくもないし、一緒に勉強しませんかとか、顔を出しませんかとか、取りようによっては色々にとれてしまう文章だけど。


 中学生になって、里花ちゃんに対する印象も少し変わってきた。


 誘いをかける男子達を適当な理由で、袖にしているのが聞こえてくる。

 それが緋色ではなく、里花ちゃんだと。不快に思うわけではないけれど、緋色のためにしていることはわかっているから。


 小賢しさが見え隠れするような駆け引きの巧妙さ、緋色に勉強を教えているくらいだから、頭がいいんだろうなって思ってはいたけれど、理由が多種多様でよくもまあこんなこと考えつくよなって感心するほど。 


 最近は男友達を理由に断っているみたいだけど。


 まさか緋色に男友達ができるなんて思いもしなかった。

 亮兄だけにしか興味がないはずじゃなかったのか?

 

 どの男子も寄せ付けなかった緋色が、特別にそばに置いている二人の男子。

 藤井賢哉と佐々田拓弥。同級生。緋色と同じバドミントン部。


 かっこよくて、頭も良くて、人望もあってと、嫌味なくらい出来た男子らしい。バドミントンも上手らしく、全国3位とか、いろいろうわさが耳に入ってくる。これでは他の男子も手の出しようがないと・・・


 それがみんなの認識。


 男子達の衝撃度はすごかったらしく、それ以来、緋色に声をかける男子は少なくなったらしい。


 それがいいのか、悪いのか。

 でも、嬉しくはないよな。

 特定の男友達っていうのは。


 彼らの姿は学校でも時々見かけるし、緋色たちを送っていく姿も。

 声をかけて挨拶だけでもしたほうがいいのか、関係ないと知らないふりをしていたほうがいいのか、判断に迷う。


 まったく、メール一つで色々思い出してしまった。

 あの里花ちゃんから―――

 引っ掛かりは感じたものの、それ以上、深くは考えなかった。


 せっかくの誘い。

 緋色と一緒にいられる時間は限られているから、翔のためにものってみることにした。


 おれも里花ちゃんに聞きたいことがあったから、ちょうどよかった。

 






 


 

前作ではたくさんの方に読んでいただき、お気に登録や評価をいただきありがとうございます。!(^^)! Ⅱの方も前作同様、よろしくお願いします。

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