第四話 終了編 ポストリュード
どーっちだ
……
………
…………パチパチ
「おそらくこの所業、悪行の犯人は上級の妖魔だね。この辺りにまだ力の残滓が色濃く残っているのを感じるよ……まあ上級と言ってもやっていることの無意味さを鑑みると頭の方は幾分か弱そうだけどね。ふう、それでも私も適当に遊んでいた仕事を早急に片付けて駆けつけてきたのだけれど、さすがは上級、逃げ足だけは速かったか」
「……」
「さて……それではまずあまり興味が無いかもしれないけれど一応報告しておくよ。この半径二百メートル以内で原形を留めている『モノ』はキミ達だけだ。他の人達は死んでいた、いや、その表現は間違いではないのだけれど、その事実は揺るぎようのない真実なのだけれど、それでも犯人の異質性を際立たせてキミを驚かせたいと思う私がそれをより一層仰々しく表現するならば、そうだね、ご近所さんは完膚なきまでに消されていたよ。跡形も影すらも残さずにね。あははは、こんなとき自分を偽れない自分がとことん異端だと思うよ。笑いが止まらない。楽しくてたまらない。悲劇のヒーローとヒロインを目の当たりにして笑うことが不謹慎極まりないことは知識だけではなく心から、私の小さな胸よりもさらに微小な心の奥底から理解しているんだ。理解しているが……クックック、やはり私は泣けないよ。笑うしかできないよ。笑って『運が良かったね』と皮肉することしかできない。不幸中の幸い、最低最悪の中の最高を皮肉することしかね」
「……」
「皮と肉の話はまたすぐ後にするから今はこのくらいにしておいて話を変えようか。むふふふ、とか今度は含み笑いをしたらいいのかな。とうとうキミ達もキスをしていちゃつくようになったかと思うと、実に感慨深いものが私の内に渦巻くよ。しかもシチュエーションが『兄が妹を殺める。ただしキスで窒息死、みたいな!』なんてすごくロマンティック。ん~ゾクゾクするね。私ももしお兄ちゃんと……って考えると色々な所が濡れてきちゃうかもしれないなー」
「……」
「反応が薄くてつまらないねー。まさかこの事態に少なからず動揺しているのかい? 確かキミ達兄妹には世の中には『こんな』こともあるということを言ったことがあるはずだけど……やはり所詮は表の世界の人間だったということなのかな。異常に慣れることはない、異端と相容れることはない、そしてなにより私達のように異物を排除することができない。残念だよ。至極残念だ。私がキミ達に絶大な期待をしていると言ったことがあっただろ? キミ達はそれを化け物の戯言か妄言だと思っていたかもしれない。でも私は本気、本気なんだ。愛沢兄妹がその全てを見届ける価値がある最高に楽しい存在だということを私は妄信している。それはさながら怪しい新興宗教の信者のようにね。だから――信じているからこそキミに問うことにするよ。ここからの話は冗談抜きだ。先程からの沈黙は動揺や後悔の所為という至って普通の人間らしい心の発露なのか、それとも禁断の一線を越えたことによる歓喜や興奮がキミの言語機能を一時的に奪ってしまったのか、はたまた私の期待を十全以上に応える他の何かがあるのか。私の悪い癖で前フリがこれ以上長くなってしまうと困るからそれでは聞くよ――――××××?」
その問いに僕は、
『僕たち』は――