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『うまい運転』と『下手な運転』

掲載日:2026/07/12

 大型トラック運転手をやっております。


 私は運転がうまいわけではありません。

 とはいえ、職業柄、『うまい運転』と『下手な運転』について一家言を持ってはおります。



 私はうまい運転とは『広く交通全体を見る運転』、下手な運転とは『自分のことしか見えてない運転』と定義しています。

 うまい運転手が走っていると、周辺の交通が安全かつ円滑に動く。逆に下手な運転手が走っていると、そのまわりの交通はギクシャクし、事故や渋滞が起こりやすくなる。

 また、何かトラブルがあった時に、自分はどうすればよかったのかを考えるのがうまいドライバー、すぐに他人を責めるのが下手なドライバーです。自分に責任を問えば『この次同じようなことになった時にどうすればいいか』を考え、成長することができます。一方的に相手のせいにしていたら、この先何度も同じトラブルを繰り返すことになりますからね。


 うまい運転手は基本的に左側を走行するものです。右側車線を走っている時間が長いほど下手くそなドライバーだと私は思っています。

 そもそも日本のルールでは『車は左側通行』です。ですが理由はそれだけではありません。路駐が多い道路とか、もうすぐ右折する場合とかなら、ルール通りにする必要はありません。

『ルールだから』ではなく、『左側走行するべき理由があるから』、うまいドライバーは左側を走行するのです。

 その理由は多くありますが、たとえば『左追い越しを防止するため』というのがそのひとつです。よく左側から追い越されて怒ってらっしゃるドライバーさんを見ますが、自分が左側を走っていれば左から追い越されることは絶対にないということがわかってらっしゃいません。他人のせいにする前に『自分はどうすればよかったのか』を考えましょう。


『左側には死角が多い』ということもあります。

 大型トラックはそのため左側に三つもミラーがついています。それでもミニとか軽とか小さい車だと、まったく見えないポイントがあります。

 乗用車だと左斜め後ろは完全に死角です。最近はリアビークルモニターなど、死角に車がいることを教えてくれる安全装備もありますが、機械を信用しきってはいけません。

 また、『左側を閉めること』は安全運転の基本中の基本です。バイクや自転車がそこに入り込まないように。右側を延々と走っていては、バイクどころか乗用車もそこに入り込んでしまい、危険ゾーンを自ら作り出してしまうことになります。


 私はいつもは大型に乗務しておりますが、この前中型トラックで高速道路を約1,300km走ってびっくりしたことがありました。

 大型トラックにはリミッターがついており、90km/h以上は出ないようになっています。

 中型だと130km/hぐらいまで出ます。

 大型の遅い列が出来ていたので、乗用車さんの列について追い越しを続けていたところ──

 追い越しが終わっても左側に戻らない乗用車さんの多いこと、多いこと……

 職業運転手であるはずの他の中型トラック、タクシー、商用バンなども延々と右側車線を走ってらっしゃいました。

 言うまでもないことですが、高速道路では一番右の車線は『追い越し車線』です。追い越す車もないのにここを1.5km以上走り続けたら『通行帯違反』となります。

 ちなみに一般道でも延々と右側を走るのは左側通行義務違反、正しい言い方で『安全運転義務違反』となりますが、これで捕まえるおまわりさんはほぼいらっしゃいません。通行帯違反は2点、安全運転義務違反は1点ですので、しかもみんながふつうにやっているので、捕まえないのでしょうね。でも違反なんですよ。


 私は『うまい運転』『下手な運転』の基準を、「もしみんながその運転をしたら、どうなるか」に照らし合わせて考えています。

 よく『速度超過』を下手な運転だと主張する方がいらっしゃいますが、もしみんなが制限速度+15km/hぐらいで走行したら、道路はこの上なく円滑に、また誰にもつっかえないので安全になります。

 もし、すべての車が延々と右車線を走行したら──

 左車線の意味がなくなります。

 みんなが違反してるので誰も捕まらないし、誰も追い越しができないので安全ではありますが、円滑は大きく損なわれます。ぎゅうぎゅう詰め状態となります。

 まぁ、現実には10割が右車線を延々走行しているなんてことはありませんが、6割ぐらいが延々右側を走っているのはよく見ます。


 右側車線に列ができていると、きちんとキープレフトしている車が閉じ込められます。

 遅い車に追いついても、右側に延々と壁ができていて、車線変更ができません。

 右ウィンカーを延々出していると、右側の壁がむしろ車間距離をさらに詰めてブロックしてきたりします。

 車間の空いているところを見つけて、ウィンカーを出し直し、ゆっくり車線変更したら急にアクセルを踏んで詰めてきて、「前に割り込まれた!」などと会社に通報してくれたりします。私は何度もこれで通報されています。

 車間を空けて入れてくれる方もいらっしゃいますが、私を入れるためにブレーキを踏んで急減速するのはやめてください。

 うまいドライバーさんは、あらかじめ車間距離をとっていて、私が入っても急減速なんてしません。周囲の交通にほとんど影響を及ばさないのです。


 右側を延々と走っていると、左から車線変更してきた車が『割り込んできた』ように見えてしまいます。邪魔に思えてしまうものです。

 しかし左から車線変更する車にとっては、右側を延々と走っている車が邪魔です。お互いに邪魔なのです。

 ここで『右側を走っている車のほうが優先だ! 直進優先だろうが!』とか言い出す方がいらっしゃいますが、まさに『自分のことしか見えていない』下手くその考え方です。譲り合いができないひとなんだな、と思うしかありません。

『譲り合い』とは基本的に、優先側が非優先側に譲ることをいいます。交通の安全と円滑のために、ルールではそれが損なわれると判断した時に、ドライバーの意思で譲り合い、交通全体をスムーズにするのです。


 私は何よりも、右側を延々と走る車が道路交通における社会迷惑だと思っています。

 自分のことしか考えていません。

 ふつうに左側から車線変更する車を『割り込み』だとか言い出します。

 他にも何か言いたいことがありましたが、忘れたのでこのへんで終わりにします。


 あ、最後に『車間距離』について──


 最近、SNSなどでよく見かけるのですが、『車間距離を一定にして走行するのがうまいドライバーだ』などと言われております。

 確かに車間距離を一定にしていれば、自分だけは安全です。前にぶつかることがありません。

 その代わり、後ろはグチャグチャになります。車間距離を一定に保つということは『スピードが極端に速くなったり遅くなったりする』ということになりますので、後続車列はこの上なく危険かつ渋滞することになります。

 車間距離は一定に保つものではなく、ペースを急に変えないために使うものです。そのためにバネのように前との距離は変動するものです。

 世間一般に流布されている嘘に流されないようにしましょう。


 最後に──

 たとえば初心者さんに『広く交通全体を見る運転をしろ』と言っても、無理です。

 その場合、自分のことだけは最低限、お守りください。それが『うまい運転』ではないということさえ自覚されていれば、じゅうぶんです。

 問題は、頭の硬化してしまったオッサンなのです。

 自分のことしか見えていないのに、交通全体のためにしている他人の運転に勝手に腹を立てて、自分が自分のことしか考えていないため、相手も自分のことしか考えないのがふつうだと思ってらっしゃいます。左から車線変更してくる車はすべて『割り込み』に見えてしまい、「ふざけるな!」と叫びながらそのお尻に向かって急加速されたりします。何より手に負えないことに、そんなんでいて、『俺は運転がうまい』と思ってらっしゃるようなのです。

『自分はうまい』なんて思ってしまったら、おしまいです。もう成長はありません。

 自分の前を大きく空けて、後ろをギチギチに詰まらせる運転をしておきながら、「俺はうまい」と豪語されてるオッサンをよく見ます。ただ遅いだけならそんなことにはならないところ、車間距離を一定に保つのが正しいと思い込んでらっしゃるから速度変化が大きく、後ろを詰まらせてしまうんですね。


『自分は遅いし、下手だから』と積極的に譲り、左側車線を離れず、追い越しもしないおばあちゃんのほうが、オッサンに比べたら遥かに運転がうまいです。


 何より数において、下手くそなオッサンは多すぎて困ります。


 そんな下手くそオッサンがSNSなどで年配ドライバー、女性、プリウスを取り上げて笑っているのを見ると何か書いてやりたくなります。


 えーと……


 終わりますm(_ _)m







 

 

 

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― 新着の感想 ―
 しいな ここみさん、こんにちは。 「『うまい運転』と『下手な運転』」拝読致しました。  上手さ下手さは、周囲を見られるか、自分の事しか見えないか。  例えば、左側走行。  高速道路では、なお厳守…
 しいな ここみ様の交通エッセイを読むたびに 「最近運転が自分本位になってないか?」  と自問します。  そもそも運転に苦手意識のある私ですが、今後も ・自分は運転が下手である自覚 ・譲る精神  …
本職であるしいな ここみ様だからこそ書ける「真に『上手な運転』とは」が語られていてとても勉強になりました。 >『自分はうまい』なんて思ってしまったら、おしまいです。 この一言に尽きますね。尊大にな…
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