あらゆる伏線を最初に置いておけば、ご都合主義でも許される説
僕は勇者の息子のバッカス。偉大な父の後を追って、冒険者になった。父はこの世界の全てを制覇して、聖霊、ドラゴン、聖獣、魔獣、おしゃべりな木、他の英雄たち、伝説の鍛治職人、世界一の商人、各首脳陣営。果ては魔王まで。全てのものと親交がある。
そんな偉大な父の背を追って僕は今日も冒険に出る。
ある日のこと、冒険者ランクがもう少しで上がる時に僕の実力よりも強力な魔物が出現するクエストに出発することになった。今はパーティーメンバーもおらず、寂しいが最初は父も仲間がいなかったようだから、僕もへっちゃらだ!
クエストの内容はドドドモグラの討伐。ドドモグラの進化系で、ドモグラを呼び出してくる厄介な敵なんだ。さらに、たまにドドモグラも呼び出されることもあり、その時はドモグラが指揮されて動くのだから、初心者には厳しい。
だけれど、運が良ければ、ドモグラを呼び出すこともなく戦闘が終わる。偉大な父を持つ僕なら大丈夫だろう。
「よ〜し、いっくぞ〜!」
東へ東へ。森を突き抜けて岩山にやってくる。ドモグラの生息地の奥深く、岩でできた王座の上にそれはいた。土の王冠を被ったモグラ。ツルハシを持ってこちらを睨んでいる。
「あ、あれはドドドモグラキング!!ドドドモグラの上位個体!!僕では勝ち目がないよ。こ、こんな時に頼りになる仲間がいればっ……」
「呼んだ?」
「き、君は?」
現れたのは空飛ぶ小人。僕の身長の1/3程度しかない小ささで、全てが小さい女の子だった。金色の髪が太陽を眩く反射して、神秘さを醸し出している。それにしても、小さい。
「小さい、とか思ってないよね?」
「え!!心が読めるの!?」
何故か、何ともいえない表情を浮かべた少女が胸の前に手を当てて、僕の周りをくるくると飛ぶ。何か言いたいが、何もいえないみたいな。そんな変な空気。どうしたんだろう。
少女を目で追っていると、ドドドモグラキングの姿が目に入って、あ!!忘れてた。あいつをどうにかしなくちゃ!!
「あいつをやっつけたいんだ!!」
「分かったわ。私はアイリス。あなたの助けになってあげるわ。」
「うん。お願い!!」
こうして、急遽アイリスが仲間になった。それにしても、この子は急に現れて、誰なんだろうか。
戦闘はあっけなく終わってしまった。僕が手を出すまでもなく、アイリスが右手を挙げて、ドドドモグラキング目掛けて手を振りおろす。
すると、光の柱が空から降ってきて、ドドドモグラキングは消失してしまっていた。
「え?」
「さ、これでよかったのよね。」
「た、助かったけれど、君は……?」
なんて力だ。確かに彼女がいなかったら、僕はやられていたかもしれないけれど、それにしてもオーバーキルすぎる。討伐した証明もできないくらいに、ドドドモグラキングの身体が消失しており、蜃気楼であったように静寂だけが残っている。
でも、確かにドドドモグラキングはその場にいて、王座を、地面をも抉れた後が残っているのが恐ろしい。
「私?私は聖霊!!光の聖霊よ。」
「精霊?」
「そ、聖霊。」
そ、そうだったのか。精霊か。それにしては一精霊の力ではない気がするんだけれど。何か特別な力を持った精霊なのかもしれない。急に現れて僕を助けてくれたのはよかったけれど、敵対していたらと思うと、ゾッとする。
でも、僕の味方なんだよね。
「ありがとう。助かったよ。」
「いいのよ。それより、私も旅に着いて行っていいかしら?」
「え!!僕からお願いしたいくらいだよ。よろしく!!」
こうして仲間が一人増えた。
また、ある日のことである。あれから、精霊だけではなく、ドラゴニュートの少女、狼少女、格闘家の娘、魔族の少女と、たくさんの仲間ができた。
皆、僕よりもずっと強くて、いつも勉強になる。いつか僕が皆を助けられるようになるんだ!!そうなるために今も冒険を続けていて、ついに暗黒大陸。世界中の強大な魔獣が集結する島にたどり着いた。
「ようやく、ここに着いたね。ここが終着点。」
皆は口々に今までの旅を回想し始め、決意のこもった瞳で前を見据えている。もう、迷いなんてない。皆の力があれば、きっと暗黒大陸だってへっちゃらだ。
そして、それは実際にその通りで、暗黒大陸といえどそこら辺にいる魔物では僕らの相手になるものではない。このまま島の最奥に到達すれば、攻略は完了となる。
「このまま何事もなく、最奥に辿り着けそうだね。」
その時、ドドドドドという音と共に空が割れ、モグラが降ってきた!!あれは暗黒大陸にしか生息しないというドドドアビスデスドラゴンモグラキング!!空を破り、大地を裂き、海を割ったという伝説の魔物!!
まさか、本当に実在したなんて。空間を潜って移動して、時間さえも超越する最強の魔物。このままでは僕らは全滅してしまうかも。でも、信じてる。僕らなら、きっと勝てる!!
「皆行くよ!!」
しかし、呆気なく死んでしまった。ただ、ドドドアビスデスドラゴンモグラキングがツルハシを振るっただけだった。それだけで、時空の深く、奈落に落とされて、星屑のように散って消えてしまった。
あぁ、これで冒険も終わりか。そう思った時だった。
「暖かい?」
仄かな火があたりに広がり、そして、僕を包み込んでいく。その火は徐々に膨れ上がり、全方位に散っていく。その数は仲間の数と一緒。
火はその勢いを増して、僕を包み込み、そしてぼんと音を立てて消失した。
「ここは?」
目の前に広がるのは更地。そこにドドドアビスデスドラゴンモグラキングが驚愕の目でこちらをみている。戻ってきたようだった。そして、あいつにとっても予想外のことだったんだろう。
隙だらけだ。こちらを凝視して、動きを止めている。そこにドドドドドという音が遠方から響いてくる。
「あれは!?」
それはミサイルだった。お姫様と商人の少女、鍛治職人の少女が共同で作ったマモノゼッタイタオースマークファイブ。魔物にしか効かないミサイルというはちゃめちゃな性能をしている。
商人の少女はあくまで、鍛治職人印の装備を身につけている時に限定することにこだわっていたけれど、結局全ての人類には効かないことになっている。
それが地面に衝突するとドドドアビスデスドラゴンモグラキングを巻き込んで、轟音を立てて消失させてしまった。
「ははは、すごいね。」
そして、ぼっ、ぼっ、ぼっと宙に火が出現して、それぞれ少女の形になった。聖獣フェニックス。灰から蘇るとされる聖獣の力。皆無事だったんだ。
こうして、暗黒大陸の魔物はミサイルで滅亡して、世界はまた一つ平和になったのであった。僕もまた、偉大な父のようになれるべく、冒険を続けていく!!
冒険はまだまだ始まったばかりだ!!




