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『退魔鬼譚』 ~鬼族の美少女と異世界帰りの勇者は怪異退治が任務である~  作者: 星衛門
第四章 鬼団子と海鬼

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68故郷




 「ただいま」


 楓が家の扉を開ける。

 すると、玄関に一人の女性が来る。


 「おかえり、楓………………って、どうしたの?!それ!」


 出迎えた楓の母が、楓の腕に抱かれている緋色の生き物…鬼団子を見て、驚く。


 「この子は鬼団子。今日の妖獣退治で保護した。ちょっと訳あって、内で今日だけ預かることになった」

 「キュキュ!」


 挨拶のつもりなのか、鬼団子は小さく鳴く。


 「あらあら、そうなの。でも、可愛いわね」

 「うん、フワフワ」


 楓の母は、鬼団子を興味深く見て、緋色の毛を撫でる。


 鬼団子は抵抗しない。

 斗真が触ろうとした際は、噛み付いたのに。


 因みに、楓の母。

 もっと言うと、楓の父もだが。


 2人共、楓の実の親ではない。

 三つ目という妖怪だ。


 楓は赤ん坊の頃、何の理由か、三つ目の両親がいる家の前に捨てられていたらしく、血の繋がりはないが、楓を育てることにした。


 楓の父も母も、楓を実の娘だと思っているし、楓も2人を実の両親だと思っている。


 「取り合えず、湯を沸かしましょう。ご飯の前に、その子と一緒に、楓もお風呂に入りなさい。その子、泥が結構付いてるから」

 「分かった」


 楓の母が風呂を沸かしに行く。


 10分ぐらい経って、湯が沸ける。

 早速、楓は鬼団子を連れて、お風呂場に行く。


 お風呂場の前で、服を脱ぐ楓。


 そして、鬼団子を抱きかかえ、お風呂場の中に入り、シャワーを浴びる。


 「キュキュ?!」

 「あ!コラ!しっかり、汚れは落とさないと!」


 突然のシャワーにビックリして、楓の腕の中で暴れるが、楓は何とか押さえつけて、シャワーで目立った汚れを簡単に落としていく。


 シャワーの後は、湯舟である。


 チャプ…。

 肩まで浸かる楓。


 「ふぅ…」

 「キュ…」


 楓と鬼団子は同時に一息つく。


 鬼団子は大人しく、楓に抱かれている。

 綺麗に、楓の胸部にある谷間に納まっている。


 「胸も……大きくなったような」


 そう言えば、ここ最近体が少しずつ大きく気がする。


 階段を小走りで降りたりすると、胸部が揺れて気になり始めるのだ。


 背も若干伸びていて、何より胸も前より発達した実感がある。

 鬼族特有の角も、鏡で見て、伸びているような、いないような。


 兎に角、隗隗高校に入る前より、身体が成長している。


 もうすぐ自分も16歳の誕生日を迎える。

 人間でも、成人女性の体つきになる時期であり、それは鬼族の女も変わらない。


 湯舟に浸かった後は、しっかりと体を石鹸で洗う。


 ゴシゴシゴシ。


 「キュ…」


 楓に現れている鬼団子は気持ち良さそうである。


 鬼団子の体を洗った後は、自身の身体を洗う。

 髪や肌だけでなく、角もきっちり。




 お風呂の後は、食事だ。


 楓の母が既にテーブルに夕食を用意していた。

 席に着く楓。


 その楓の膝の上に、当たり前にように座る鬼団子。


 「ただいま」


 丁度よいタイミングで、楓の父親が帰ってくる。

 楓の父は、「姿化かし」で人の姿に変身し、人のように社会人として働いているのだ。


 「お!なんだ、その子は?」


 楓の父も、鬼団子の存在に驚く。


 楓は父にも、鬼団子の事情を説明する。

 父は納得してくれて、楓の隙のしていいと言う。


 「「「いただきます!」」」

 「キュ!」


 楓、母、父の3人に加え、鬼団子と一緒に食卓を囲む。


 人のようにご飯を食べる楓と父と母。

 そして、鬼団子。


 「はい、あーん」

 「キュ!」


 楓から差し出されるご飯を、美味しそうに食べる鬼団子。


 実際のところ、楓のような妖怪も、鬼団子のような妖獣も、人の食べ物を食べなくても、生きていける。


 時々、妖気が濃く漂う山や神社、寺院で、妖気を吸いこむだけで、腹が満たされる。

 なので、食物を口にするのは、全くの無駄……という訳でもない。


 人の食事をするのは、まず単純に美味しいから。

 そして、人の生活に溶け込むためである。


 楓が通う隗隗高校には、普通の人間もいる。


 人間に混ざっても、そのグループに溶け込むために、人の食事を取るのは効果的なのだ。


 こういった理由は、前に斗真にも教えたが、それ以外にも、理由がある。

 それは、人の食事からでも、僅かに妖気を吸収できるからだ。


 そもそも妖気というものは、あらゆる場所に存在する。


 それは食物も同じ。

 だからこそ、こうして人の食事を取って、妖気を摂取しているのだ。


 「隣の県の特集をやっているわね」


 楓の母が、テレビを見る。

 テレビには、楓が住んでいる長野県の隣の県の映像が流れていた。


 その時、テレビに流れてきたのは、海。


 それは、海の映像だった。

 何の変哲も無い映像。


 しかし、


 「キュキュ?!」


 映像を見た瞬間、鬼団子が慌てた声を出す。


 「え?どうしたの?」


 驚く楓を他所に、鬼団子は楓の膝から降りて、テレビの方に向かう。


 「キュ!キュ!」


 テレビの傍に来た鬼団子は、ひたすら飛び跳ね、何かを伝えようとする。


 テレビには、依然として、隣の県の海の映像が流れている。

 その映像と鬼団子を交互に見た楓は、


 「あ!」


 一つの結論に辿り着く。


 「もしかして、貴方の故郷なの?」

 「キュ!!」


 楓の問いに、鬼団子はそうだ!と言いたげに反応し、大きく飛ぶ。


 正解のようだ。

 テレビに映ってる海が、鬼団子の故郷のようだ。


 てっきり、山から下りてきたのかと。


 だから、今日の夕方に山へ行かせようとしても、一向に行こうとしなかったのか。


 テレビにある海は、ここから行こうとしたら、電車に乗って、一時間ぐらいで突く場所。

 楓自身、行ったこと無いので、土地柄は良く知らないが。


 「明日、琴葉さんに相談してみようか」


 退魔士の仕事を一時中断して、鬼団子の故郷へ行けるか、相談しようと考える楓だった。




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