ヒロインに転生だか転移だかをした
キャラの名前が…思いつかなかったのです…
私は、どうやら小説の世界に転生だか転移だかをしたようだ。
私は普通のOLをしていて、小説『ヒロインは溺愛される』を読んでいた。
ヒロインのルーベラは、姉のルマンドからいじめられていたが、王立学校の入学式の後に迷子になって庭園で王太子のラングレイスと出会い恋に落ち、姉や王太子の婚約者エリーゼにいじめられながらも、2人で支え合い立ち向かい、後に結ばれる。
卒業パーティーの時に、姉と王太子の婚約者を断罪して、新たにヒロインと王太子は婚約する。
私はそのヒロイン…
の、はずだけど、なぜか姉のルマンドに、いじめられている。
そして、姉にと持ち込まれた婚約を、「婚約者がいたら王太子と婚約できないじゃない!」という謎の理由で私に押し付けてきた。
姉の婚約者(のはずの男)アルフォートは、公爵子息で王太子の従兄弟だが、浮気者で、常に女の子を侍らせていた。
小説では、姉は、婚約者に蔑ろにされた恨みも込めて、王太子に愛される妹を、余計にいじめるようになるのだが…
その最低男が私の婚約者になった。
月に1度の交流の為のお茶会にも来ない(他の女とデートのため)。
そのうちに婚約解消してやろうと思っている。
私は婚約者のいる王太子には近付きたくなかったので、入学式の後に庭園には行かなかった。
王太子には婚約者がいるのに、ちょっかい出すとか頭おかしいんじゃないの?
王太子も、先に婚約解消してから新しい女と付き合えよ…と思う。
庭園には、どうやら姉が行ったらしい。そこで王太子と出会い恋に落ちた…とは姉の談だ。
めっちゃ自慢してきたが、羨ましくはない。
多分、姉も転生だか転移だかをしていて、自分がヒロインになろうとしているのだろう。
そして、王太子の取り巻きの、宰相の子息や騎士団長の子息も侍らせているらしい。
学校内で、3人に囲まれて過ごしている姉の噂をよく聞く。
私は近付かないように気をつけている。
いじめたと因縁つけられたくない。
姉達は2年生で、校舎が違うから、めったに会うことはないから本当に良かった。
だが、呼び出されては、どうにもならない。
図書室のある棟の廊下、階段の下。
イベントの始まりか。ヒロインに成り代わったルマンドがいじめられているところへ、王太子がやってくるんだろう。
「お姉様何かご用ですか?」
「ルーベラ、あんた本当にブスでグズね…あんたに押し付けた婚約者は浮気者の最低男だし、いい気味…私は王太子と幸せになるわ…あっ来た来た…きゃあ!」
通りかかる王太子。
尻もちつく姉。
「どうした!?」
王太子は走って姉の所へ行く。
「ラングレイス様…妹が…自分にラングレイス様を紹介しろと言ってきたので断ったら、突き飛ばされました」
「何だと?怪我はないか」
「はい…」
「心配だな…医務室へ連れて行こう」
「ありがとうございます」
「さぁ行こう」
王太子は姉を支えて去っていく。
王太子についてきていた宰相の息子や騎士団長の息子が通りすがりに
「最低だな」
「お前などラングレイス殿下が相手にするわけないだろう」
と、嫌味を言う。
相手にしなくて良いし。むしろ関わりたくないんだけど。
私は深呼吸をした。
私が階段を上がろうとすると、上に婚約者のアルフォートがいて、どうやら全て見ていたようだ。
「弁解はしないのか?」
「悲劇のヒロインを救うヒーローには、悪役の意見など聞こえませんよ」
「悪役…」
アルフォートは顔をしかめた。
「…ところで…お前が男遊びをしていると噂があるが」
「婚約者がいるのにですか?」
「…」
婚約者がいるのに…俺も人のこと言えないな…とアルフォートは思った。
「そうだ、1度聞きたかったのだが、俺の婚約者はお前の姉になる予定だったが、お前になったのは…、何故かと思っていたが…お前の姉がお前に押し付けたからなのか?」
「婚約者がいたら王太子殿下と婚約できないじゃない…って言ってました」
「は?」
「王太子殿下と婚約するらしいです」
「ラングレイス殿下も婚約者がいるぞ」
「そうですね」
アルフォートは頭痛がしてきたらしく、頭を手で押さえた。
「私も言いたいことがありました」
「何だ?」
「女遊びしたいなら婚約解消してください」
「は?」
アルフォートが面食らった顔をした。
「他の女触った手で触られたくないんで、早めに婚約解消してください」
「は?」
「顔が良いのと次期公爵って立場だけでチヤホヤされてるだけなのに、そんなに嬉しいですか?」
「は?」
「正直、気持ち悪いです」
「気持ち…悪い…?」
「早く婚約解消してください」
アルフォートは絶句した。
「それでは」
気が済んだとばかりに階段を上がる。
図書室へ行く。抱きしめている本を返して新しい本を借りるためだ。
読む本を探していると、アルフォートが声を掛ける。
「おい」
「なんですか?」
「本を読むのか?」
「読みますけど」
「お前は勉強もせず、お前の姉に課題をさせ遊びほうけているとお前の姉から聞いている」
「それで?」
私は否定も肯定もせずに言った。
「それで…とは?」
「だからなんですか?」
「だから…」
「姉の言う事を信じたんですか?」
「信じていたが…自信がない…」
私は黙った。
「よく考えてみれば、実際のお前を見ていないからな」
「女の子とのデートに忙しいですもんね」
「すまなかった…」
私の嫌味に婚約者は頭を下げた。
「入学式の日に、お前の姉が迷子になったと言って庭園にやってきて、ラングレイス殿下と会った」
「…」
「でもお前の姉は2年生だろう?迷子になるのはおかしいと思わないか」
「そうですね」
「だから、お前の姉の事を観察していた」
私は黙って続きを聞いた。
「それで…さっき…見てしまった…お前の姉の本性を…だから、もしかしたら…お前の事も…嘘なんじゃないかと思って…」
「…」
「実際にお前は図書室で本を借りている。さっき持っていた本は借りていた本だろう」
「そうですね」
「つまり、本を読んだということだ…遊びほうけているわけではない…」
「…」
「親に決められた婚約だから反発していたんだ。けど、お前に婚約解消しろと言われて…お前…俺と婚約して嬉しくないのか?他の女なら喜ぶぞ」
「浮気者と婚約できて嬉しいと思いますか?」
「…そうだな…」
「人から聞いた話は本人に確認するのと、話は多方面から聞いた方が良いですよ。一方の話だけでは騙される事もありますから」
「そうだな…本当にすまなかった…その…それで…」
「なんですか?」
「婚約解消は、少し待ってもらえないだろうか?」
「なぜです?」
「お前の事を知りたい」
「…」
「俺が女にモテているのは…顔が良いのと次期公爵の立場だけって…本当なのか?」
「それ以外にあります?」
「…成績は…良いほうだし…性格も…悪くないだろう?」
浮気する男の性格が悪くないとは?と私は思ったが黙っていた。
「他は?」
「他は…他…剣術だって、そこそこの実力はある」
「他は?」
「他…は…」
「…」
「…」
「…」
「これからは、婚約者を大切にする…お前に気持ち悪いと言われて…父が愛人の所に通っているのを知った時に気持ち悪いと思ったことを思い出した…
父のようにはなりたくないと思っていたのに…父と同じことをしていた…」
頭を下げるアルフォート。
「だから…これからはお前のことを大切にする!今まで本当に申し訳ないことをした…これからは態度を改めるから…婚約解消をするのは待ってほしい…」
「口ではなんとでも言えますよ」
「分かっている…この最低男に…慈悲をくれないか?本当に態度を改めるのか…猶予を与えてほしい」
「では、私の名前は?」
「…」
アルフォートは顔合わせの時に名前を聞いていたが、聞き流していて、覚えていなかった。
「…すまない…俺は…本当に最低だった…」
跪いて、手を差し出すアルフォート。
「俺に、貴方の名前を知る権利をくれないか?」
「仕方ないですね」
アルフォートに差し出された手に、手を乗せる私。
王太子の婚約者の、公爵令嬢エリーゼが、姉に注意をしていた。
「王太子殿下の名前を許可もなく軽々しく呼んではいけない」
「婚約者のいる相手に近付いてはいけない」
などなど、普通の令嬢が教わる内容だ。
姉は嘲笑う。
「ラングレイス様から名前を呼んで良いと言われているの。愛されているから」
笑いながら去る姉。
立ち尽くす公爵令嬢に、アルフォートが声を掛ける。
「エリーゼ嬢…申し訳ない、聞こえてしまった」
「いえ…」
「こちらは私の婚約者のルーベラだ」
アルフォートが私を紹介する。
「始めまして」
「貴方はルマンドの妹…」
挨拶をする私を睨むエリーゼ。
「浮気者は早く捨てた方が良いですよ」
「何…ですって?」
「貴方は素敵な女性です。その価値も分からない、婚約者を蔑ろにする浮気男より、もっと素敵な人が貴方にはお似合いです。貴方を大切にしてくれる人が必ずいます」
「エリーゼ嬢を蔑ろにする浮気者を追いかけるより、大切にしてくれる人に目を向けてください。自分を大切にしてください」
アルフォートも続けた。
「自分を大切に…私を大切にしてくれる人なんて…いるかしら」
「いますよ…周りをよく見てください。本当に貴方を心配している人が、たくさんいますよ…あちらにも」
エリーゼが振り向くと、王太子の弟王子のラングロールが隠れて見ていた。
「…やぁ…」
「ラングロール殿下…」
エリーゼ、ルーベラ、アルフォートが、ラングロールにお辞儀をする。
「頭を上げてくれ…そうだよエリーゼ嬢…エリーゼ嬢が兄を好きなのは知っている…でも婚約者がいるのに浮気するなんて…」
「そうですよ、本当に愛しているなら婚約解消してから付き合えば良いんです。婚約者がいるから、障害があるから燃え上がるんですよ、浮気は」
私が言うと、エリーゼが真顔になった。
「私がいるから燃え上がる?」
「そうですよ」
「…馬鹿らしいわね」
エリーゼは、フッ…と力が抜けたように笑う。
「本当にそうだね。私なら、エリーゼ嬢を大切にするのに」
ラングロールが、優しくエリーゼの手を取る。
「ラングロール殿下…」
「ずっと…エリーゼ嬢を見ていた…エリーゼ嬢が兄を支えようと王太子妃教育に励んでいたから、私も兄を支えようと努力した…けど、兄が他の女を選ぶなら…」
ラングロールはエリーゼを見つめる。
「浮気の件は、父に報告している」
「国王陛下に?」
「エリーゼ嬢と婚約したから公爵家に後押しされて王太子になったのに…。エリーゼ嬢を無碍にするなら公爵家を無碍にするのと一緒だ、それが分からないなら」
「そうね…私だけじゃなく公爵家を無碍にされたのね…ラングレイス殿下のこと父に相談するわ」
「それがいい」
「ありがとうございますラングロール殿下…それから貴方達も」
ラングロールに礼を言ったあと、アルフォートと私にも礼を言うエリーゼ。
「もう姉には近づかないほうがいいです」
私はエリーゼに言った。
「なぜ?」
「貴方に意地悪されたと王太子殿下に訴えて、大勢の前で断罪するかもしれません」
「あの女ならやりそうだな。それなら1人にならないほうがいい」
私の言葉にラングロールも頷く。
「そうですね」
「私がそばにいて守りたいが…」
「まだ王太子殿下と婚約してるから浮気と言われます」
「それなら私達が」
エリーゼの取り巻きの令嬢達が出てきた。
「貴方達…」
「エリーゼ様のことが心配でしたが、ラングロール殿下なら…」
「ありがとう…」
「大切にしてくれる人、いましたね」
「そうね…ありがとう」
「私も、校長に相談して、こっそり護衛をつけるよ」
ラングロールの言葉に、微笑むエリーゼ。
「ありがとうございます」
学校内で所構わずイチャイチャするラングレイスと姉。
他の生徒の前で、エリーゼと私に意地悪されたとラングレイスに訴える姉。
涙を流してラングレイスに縋る姉に、ほとんどの男子生徒が同情したようだ。
女子は、婚約者のいる男ばかり声を掛ける姉を快く思っていない。
月日が経って、ラングレイス達や姉やアルフォートの卒業パーティーの日。
「エリーゼ!お前との婚約を破棄する!」
ラングレイスの声が、パーティー会場である学校の講堂に響き渡る。
よく大勢の前でそんな事を言えるな。
「理由は?」
エリーゼが、ラングレイスに向き合う。
「お前がルーベラと手を組んで、ルマンドに嫌がらせをした!ルマンドは傷付いている!私の愛するルマンドを害すなど、言語道断!お前有責で婚約破棄だ!」
「本当に良いのですね」
「勿論だ」
「では破棄しましょう」
「婚約は破棄された!これからはルマンドと婚約する!」
「ラングレイス様!」
見つめ合い盛り上がるラングレイスと姉。
「ところで、私がしたという嫌がらせとは何ですか?」
エリーゼが聞く。
「学校で、私に暴言を言ったり、突き飛ばしたり、持ち物を盗んだりです」
姉が訴えた。
「おかしいですね…私はこの1年ずっと、王太子妃教育や執務で王城にいて、学校には行ってないですよ」
エリーゼの答えに慌てる姉。
「そっそれに妹だって、家で私を殴ったり、ドレスを奪ったり私の食事を落としたり…」
「私は今、アルフォート様の家で、教育を受けているので家にはいませんよ」
私の答えに、アルフォートも続ける。
「学校にいないエリーゼ嬢に嫌がらせされ、家にいないルーベラ嬢に嫌がらせされたんですね〜ルマンド嬢は」
「そんなわけ…」
ラングレイスが、姉の顔を見る。
「ラングレイス殿下、ルマンド嬢から聞いた話をエリーゼ嬢やルーベラ嬢に確認しましたか?」
アルフォートが聞く。
「いや…」
「上に立つ者が、そんな事でよろしいのですか?人の話を鵜呑みにしてはいけないと、教わりませんでしたか?」
お前が言うな。とは、言わないであげよう。心を入れ替えたし。
そこへ、国王がくる。
「父上!エリーゼとの婚約を破棄しました!ルマンドとの婚約を認めてください」
「よかろう」
「ありがとうございます」
「そして、エリーゼ嬢とラングロールとの婚約を認め、これ以降、ラングロールを王太子とする」
国王の発言に驚くラングレイス。
「なぜですか?!」
「エリーゼ嬢と婚約したことで、公爵家の後ろ盾ができたことによりお前は王太子となった。エリーゼ嬢と婚約破棄したのだから、公爵家の後ろ盾は無くなり、お前は王太子ではなくなったということだ」
「そんな!」
「そもそもお前は婚約者がいるにも関わらず、他の女にうつつを抜かし、遊びほうけていた。その間、お前の執務をしていたのは婚約者であるエリーゼ嬢と弟のラングロールだ。つまり、お前がいなくてもラングロールがいれば問題ないというわけだ」
「そんな!」
「お前はルマンド嬢と婚約した。ルマンド嬢の家に婿入りが決まっている」
「婿入り!?」
「お前がこんなことを企てている事は分かっていたからな。エリーゼ嬢とお前の婚約はとっくに解消されているよ」
「は!?」
「お前の婿入りは決定事項だ。話は以上だ」
「父上!」
ガックリと膝をつく王太子は、エリーゼに向かって声を掛ける。
「エリーゼ…やっぱり婚約破棄はやめよう…俺と婚約してくれ…」
「嫌です」
エリーゼは、はっきりと王太子に言い、ラングロールと手を繋いだ。
「エリーゼ嬢は僕が幸せにしますよ兄上」
ラングロールの言葉に、頭を抱える王太子。あ、元王太子か。
「そんなぁ~王太子妃になるはずだったのに!…そうだ!ルーベラ!婚約者を変えましょう?公爵令息のアルフォートと私が婚約するわ!元々私が婚約するはずだったんだから」
姉がアルフォートに縋りつこうとする。
「お断りだ」
アルフォートが即答する。
「は?」
「俺はルーベラと婚約しているし、ルーベラを愛している。お前なんか入る隙間もない!ラングレイス殿下とお幸せに!」
「そんな〜!」
そんな感じで断罪は終わり、エリーゼとラングロールは婚約し、幸せに過ごしている。
ラングロールは一途で、エリーゼは溺愛されているらしい。
元王太子と姉は、我が家で、領地経営の勉強をしているが、今まで勉強をサボってきたからか、両親や新しく雇われた家庭教師に厳しくしごかれているらしい。
まぁ、がんばれ。
卒業して、王城で文官になったアルフォートは、他の女が近付いてきても「婚約者がいるから」と断っているらしい。
交流のためのお茶会には必ず参加するし、花束やらお菓子やらアクセサリーやらを贈ってくるようになった。
私が学校を卒業したら、結婚式を挙げる予定だ。
読んでいただきありがとうございました




