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War brothers

作者: ハスダ
掲載日:2025/12/31

「麗華〜。」

「由香ちゃん、何?」

今日はお友達の由香ちゃんと遊びに出かけていました。

「これ、恋愛運アップだって。」

由香ちゃんの言うこれとは、アクセサリー屋に売ってある指輪のことでした。

「麗華、彼氏欲しいって言ってたじゃん。」

高校生になってからみんなが恋愛を始めていくので、私もそろそろお相手が欲しい時だったのです。

「指輪ねえ…。」

正直、スピリチュアル系のことはあまり興味がありませんでした。

「おもちゃっぽいけどピンクのダイヤだし、服と合ってるんじゃない?」

私の好きな服装はロリータなので、今日もそれを着ていました。

「勉強運ってのもあるんだね。私はこっちにするよ。麗華はどうする?」

ちょっと迷いましたが、由香ちゃんとお揃いでつけたかったので恋愛運の指輪を買うことにしました。






翌日、その指輪をつけて登校しました。校則があまり厳しくないので私の学校では指輪ならOKなのです。

由香ちゃんとお揃いなので見せ合って楽しんでいました。

「でも私、指輪を買ったのはいいけど好きな人がいないの。気が早かったかな?」

「きっとこれから出会えるよ。どんな人がタイプなの?」

「…そういえば特に考えたことなかった。」

由香ちゃんはガクッとしました。

「麗華、恋に恋してちゃダメだよ。」

「だって今まで興味なかったんだもの。私服のことばかりこだわってて…。誰がモテるのかもわからないし。」

趣味に没頭していると他のことに頭がまわらないのです。

「このクラスだと渡井くんが人気あるよ。」

渡井君?

確かに彼は顔は整っていて髪型もレイヤーカットで決まっていますしオシャレな人です。ですが、クールなのかあまり喋る人ではないので、どんな性格の人なのかわからないのです。


彼を見ていると目が合ってしまいました。

驚いてすぐにそらしましたが。

「どうしたの?」

「目が合っちゃった…。」

「意外と渡井くんの方から来るかもよ。」

由香ちゃんはニコニコしていましたが、私はただの偶然だと思いました。


そして何事もなく一日は終わり、帰るために下駄箱へ向かいました。由香ちゃんは部活に入っているため一緒には帰れませんでした。

「沢口。」

私の苗字を低い声で呼ぶ人がいました。振り向くと、渡井君でした。どうしたのでしょう?

「な、何?」

突然のことだったので戸惑いました。

「俺、お前のこと好きなんだけど。」

「!!?」

こ…こんな急に来るなんて。

「え?えっと…。」

「嫌ならそれでいいから。」

「…。」

こういうものは回りくどく共通の話題を作りながら進展して最後に告白するものと思っていました。だからこんなに突然告白されてしまうと対処の仕方が分からないのです。

「……突然で驚いてるから、明日きちんと返事してもいいかな?」

「うん!いいよ。」

そのとき、いつものクールな彼からは想像できない素敵な笑顔だったので、一瞬フリーズしてしまいました…。



家に帰ってから渡井君のことが頭から離れませんでした。これは指輪のおかげでしょうか?彼はどうして私のことを好きになったのでしょう?

『うん!いいよ。』

さっきの笑顔が頭から離れません。クールな彼がモテる理由はこの笑顔かもしれません。




私…渡井君のことをもっと知りたいです。








翌日の朝に彼を呼び出しました。人があまり通らない渡り廊下なら誰にも聞かれないでしょう。

「渡井君、私…渡井君のこともっと知りたいの。だから付き合ってみたい。」

「ありがとう。嬉しいよ。」

またあの素敵な笑顔になりました。私はこの笑顔を見るたびに惚れていくのかもしれません。

渡井君にも聞きたいことはたくさんありましたが、朝だったので下校のときにお話することにしました。






そしてこのことを由香ちゃんにだけは伝えました。

「すごい!私うれしいよ。麗華に彼氏できるなんて!指輪買って良かったね!」

自分のことのように喜んでくれる友達がいるのも嬉しいことです。

しかし、恋愛は由香ちゃん無しで進めていかなければなりません。



そして下校時間になり、渡井君と一緒に歩いていました。まだほとんど何も知らない状態のため、誕生日、家族構成、好きなものを話しました。私は一人っ子ですが、渡井君には弟がいるそうです。

私はロリータ趣味があることも打ち明けました。

「へぇ、それで私物がピンクなんだね。その指輪もピンクだし、可愛いやつだね。」

「ありがとう。」

私は、一番聞きたかったことを聞くことにしました。

「渡井君……なんで私を好きになったの?」

彼は一瞬考えましたが、すぐに口を開きました。


「わかんないんだよね、そういうの。結局誰もが納得する理由はないと思うし、ただ単に沢口だけにしかない魅力があるから惹かれたんだと思う。沢口だってピンクが好きなのに理由はないだろ?」


こうやってきちんと説明されると聞くのが楽しくなります。

「沢口は?なんで俺と付き合っていいと思ったの?」

「…普段クールな渡井君の笑顔を見て、その顔が忘れられなかったの。」

こんな理由では納得しないかもしれませんが、これが本心なのです。

「俺、あまり笑顔作らないんだよね。好きな人の前だから笑えたのかも。」

相変わらず淡々と話すところが素敵に見えました。

「…そういえば、弟さんはどんな人なの?」

ちょっと気恥ずかしくなったので別の話題を振りました。

「弟は俺と顔が似てるんだけど、俺と違って誰とでも喋るし、彼女がよく変わるんだよね。たまに家に連れてくるし、俺にさりげなく自慢してくる。」

ちょっと目つきが変わりました。弟さんとはあまり仲が良くないのかも…。

「でも、俺は本当に好きになった人としか付き合う気はないし、争う気もないよ。」

そう言われて安心しました。




渡井君のフルネームは渡井裕也君。なので下の名前で呼ぶことにしました。裕也君も私を麗華と呼んでくれることになりました。


「麗華、一緒に帰ろう。」


クラスのみんなはモテる裕也君と目立たない私が付き合うなんて、とかなり驚いていました。ですが2週間ほど経つとみんな慣れてきたようでした。




「明日デートしない?見たい映画があるんだ。」

今まで下校を一緒にしているだけできちんとしたデートはまだしていませんでした。

ようやく、ゆっくり一緒にいる時間ができます。


ですが、ひとつ気がかりなことがあるのです。

裕也君、あの笑顔を見せてくれた後からあまり表情が変わらないのです。周りの目を気にせずに騒ぎ立てる男の子たちより大人っぽくみえて素敵なのですが、私といるときに楽しいのかどうかがよくわからないのです。

でも、その代わり言葉にしてきちんと伝えてくれます。告白の仕方だってストレートに直球で伝えてくれたのだから、余計なことが言えないだけです。

きっと明日はいい一日になります。




そして翌日、私はロリータ服で待ち合わせ場所に向かっていました。

「麗華!」

裕也君に手を振られましたが、周囲の人がそれを見て驚いていました。きっと素敵な裕也君が私みたいなロリータ趣味の女と一緒にいたから驚いたのでしょう。

ですが裕也君は気にしていない様子でした。

「周りなんか気にしなくていいんだよ。行こう。」

周りに流されない裕也君、素敵です。



映画は少年漫画が実写になったものでしたが、有名なコメディ作品なので私も楽しんで観ることができました。裕也君は漫画が好きなので発売日になると朝から本屋さんへ向かうことがよくあるそうです。


映画の後は一緒にお昼ご飯を食べました。

「麗華、もしよかったらこの後俺の家に来ない?実家だからさ、安心してよ。」

お昼からの予定は決まっていなかったので、そうすることにしました。

「うん、行ってみたい。家族の人もいるんだよね?」

「両親と、たぶん弟もいるけど、そんな気にしなくていいからさ。」

弟さん…。裕也君と仲の悪い弟さん。どんな人なのか気になってはいました。



「いらっしゃい。」

裕也君のご両親はとても優しそうなお二人でした。

「裕也に彼女ができるなんて嬉しくてね。ゆっくりしていってね。」

お母様は私の服を見てオシャレねえ、とほめてくれました。こんな服装で来てしまっていいものかと心配していましたが、お母様もロリータに憧れがあったようで

ロリータ系の雑誌がいくつか置いてありました。

「お菓子とジュースがあるから準備するよ。先に2階にあがってて。」

裕也君と弟さんの部屋は2階にあるので先に上がりました。

ですが、ドアが2つありどちらか迷ってしまいました。どちらかは弟さんの部屋だろうし、間違って入ってしまうのは嫌だし…。

どうしようかと戸惑っていると、片方のドアが開きました。

弟さんでした。裕也君と似ていましたがちょっと派手でした。

「こんにちは。麗華さんですよね?」

「はい。初めまして。」

「裕也の部屋はそっちなんで入っててください。」

裕也君とは正反対でよくしゃべるとは言っていましたが、本当にその通りです。

裕也君の部屋に入ると、すっきりと片付いていました。

「裕也いいなあ、彼女かわいくて。」

「!?」

弟さん…本当に正反対すぎる。

「麗華さん。」

弟さんは私の耳元に顔を近づけてきました。

「裕也に飽きたら俺のところに来てください。」

「!!!!」

「では、ごゆっくり。」

…さすがに驚きました。裕也君と同じ顔でそんなこと言われてしまうなんて。あまり喋らない裕也君でもモテるのだから、お喋りになってしまったら余計にモテるのは当然です。

しばらくして裕也君がお菓子と飲み物を持って部屋に入ってきました。

「麗華、お待たせ。・・・どうした?」

放心状態の私を見て、首をかしげていました。

「い、いやなんでも。」

「とにかく座ってよ。ゆっくりしよう。」

真ん中にテーブルを置いて、お菓子と飲み物を置いてくれました。

「裕也君、さっきは弟さんが部屋を案内してくれたの。」

「ああ、朋也ね。そっくりだろ。」

弟さんは朋也君というのですね。

「うん。でも朋也君はよく喋る人だね。」

「そうなんだよ。よく比べられるんだよね。同じ顔してても人当たりがいいのは朋也のほう、モテるのも朋也のほうだねって。それで乗り換えられたこともあるし。」

やはり、あまり仲が良くないのですね・・・。

「正直、朋也を先に見ていたら麗華も朋也に惚れてたんじゃないかって思うんだよね…。」

「そ、そんなことない!」

表情の変わらない裕也君がいきなり笑顔を見せたから好きになったのです。最初から朋也君に来られても好きにはなれないはずです。

「裕也君だって…私と同じ顔の人がいたらその人のほうに行っていたの?」

「…たしかに、顔だけ同じでも好きにはなっていないかもな。麗華の個性はなかなか他の人には真似できないから。」

「そうでしょ。だから私は裕也君が好きになったの。」

思わず言ってしまってちょっと恥ずかしくなりました。

「嬉しい。俺も・・・好きだよ。」

キスはまだ早いけど、手をつなぎたくなる雰囲気でした。

「あー、そういえばさあ、授業でわかんないとこあるから教えてよ。教科書持って帰ってるから。」

せっかくいい雰囲気になりそうだったのに……。

「う、うん。」

お勉強は今じゃなくてもいいのになあ…。

なんだか物足りなくなりました。





裕也君、たぶん照れ屋さんなのだと思います。朋也君のほうがモテるのは、付き合ったその先が裕也君だと進展しないからだと思います。

でも私は朋也君のほうに乗り換えたいなんて思わないです。それは裕也君にしかない魅力があるからです。


私だって待ってばかりはダメです。

裕也君の誕生日がもうすぐなことに気づきました。だから、私からデートプランを考えてお誘いします。


お誕生日プレゼントは裕也君の好きな漫画のグッズを買うことにしました。

「へえ、渡井君ってこういうの好きなんだね。クールだからもっとダークなのが好きなのかと思った。」

由香ちゃんは渡井君とは会話をしないのでほとんど何も知らないでいました。

「そうなの。家に行ってもこの漫画が全巻置いてあったの。」

「こうやって麗華にしか知らないことが増えていくなんて嬉しいでしょ。」

確かにそうなのですけれど・・・いいことも知れるし嫌なことも知れてしまいます。

「そういえば、あの指輪は本当に効果があるみたいね。私、成績上がったのよ。」

私は素直に褒めましたが・・・由香ちゃん、いつもお勉強を頑張っていました。授業中も必死でノートを取り、先生にも質問して休み時間も暗記を頑張っていました。

やはり、指輪なんて気休めでしかないのです。自分でも頑張らないといけません。


そして裕也君のお誕生日の日。

待ち合わせをしていましたが、迎えにいくというサプライズをしようと思って行く前に電話をしてみました。

『はい。』

「裕也君?」

『うん。どうした?』

「お誕生日おめでとう。今から家に行くから待っててね。」

『いいの?わかった。』

プレゼントを持って意気揚々と裕也君の家に向かいました。


チャイムを鳴らすと、出てきたのは朋也君でした。

「こんにちは。裕也君いる?」

「出かけてますよ。漫画の発売日だから。」

「でもさっき電話で話したんだけど…。」

「ああ、あれ俺です。裕也、スマホ忘れて出かけたから。」

「嘘…!?」

「麗華さん、彼氏とほかの男の声くらい聞き分けないと駄目ですよ。」

似ているので気づきませんでした…。裕也君に怒られちゃう。

「せっかくだし、待っていたらいいですよ。」

私はリビングに通されました。ご両親は今日はいないようでした。

「麗華さん、わざわざ迎えに来たんですね。今日は駅で待ち合わせするって聞いてましたけど。」

「私からも裕也君に何かしないといけないと思ったから。」

「へえ…女のほうが動かないといけないんですね。俺ならそんなことさせないのになあ。」

女慣れしている朋也くんならそう考えるのでしょう。でも、お付き合いを進めていくなかで裕也君に頼りっぱなしはいけません。

「裕也、女を喜ばせる言葉は知らないからなあ。この前だって裕也がムードぶち壊して残念でしたね。」

聞いてたの…?

「麗華さん?」

気づけば涙目になっていました。

「付き合ってから裕也君の表情が変わらなかったり、素直に好きだとかあまり言ってくれないから…。何を考えてるのかよくわからなくて。裕也君のこと好きなのに…。」

「麗華さん、俺にしたらいいのに。俺、麗華さんのこと好きですよ。」

手を握られました。裕也君が…朋也君だったらよかったのに…。


すると、自転車を止める音が聞こえました。

「裕也帰ってきちゃった。どうします?」

「い、言わないで!こんな顔見せられない。」

「ちょっと待っててくださいね。」

リビングに入ってきたらいけないので、奥にあった部屋に隠れました。

「朋也ー?もしかして麗華来てる?女の子の靴があったけど。」

裕也君の声が聞こえました。

「来てないよ。靴は俺の友達のやつだよ。」

「またかよ。俺、麗華とデートだから行ってくるわ。」

朋也君が女の子を家に入れるのに慣れていたので気にしていない様子でまた出ていきました。

「裕也、もう出ていきましたよ。誕生日だし、今日くらいはかまってやってくださいよ。」

涙目で崩れたので軽く化粧を直してから出ました。



「麗華!」

何も知らない裕也君は笑顔で迎えてくれました。

「裕也君、お誕生日おめでとう。」

私は裕也君のために買ったグッズを渡しました。

「ありがとう。漫画を買うためにグッズは我慢してるからうれしいよ。」

満面の笑みの裕也君でした。

朋也君の笑顔と裕也君の笑顔は別物なのです。裕也君の笑顔は私にしか見せてくれない特別なものなのです。

裕也君、朋也君のほうに行きそうになってごめんね…。やっぱり私は裕也君が好きなのです。


今日は水族館にいったり一緒にお買い物をしたりして楽しんでいました。

「今日は楽しかったよ。ありがとう。」

裕也君にお礼を言われてその場で解散しようとした時です。

「麗華・・・その靴・・・。」

そういえば・・・先ほど靴だけは見られていました。

「やっぱりデートの前に俺の家にいたよね?朋也と一緒に。」

「ち、違う!私は家から直接駅にむかってて・・。」

「こんなピンク一色の靴履く女、朋也の友達にいたかなあ・・・。それに、何も知らなかったらそんなに慌てないよね?」

私の個性が悪いほうに目立ってしまいました。

「なんで隠れてたの?すぐ出てくればよかったじゃん。」

「私・・・裕也君の気持ちがよくわからなくて。この前だっていい雰囲気を壊されて、それが嫌だったの。それで朋也君に話を聞いてもらってたの。」

「朋也に?」

不機嫌になったのがすぐにわかりました。

「俺から朋也に乗り換えた女がいること話したよね?またそれを繰り返されたら嫌なこともわかるよね?麗華もそいつらと同じってわけね。やっぱり喋れる男がいいんだね。」

「ち、違うよ!流されそうになったけど裕也君のことを好きな気持ちは変わってないよ。」

「流されそうになるなんて信用できないよ。もう朋也と付き合えばいいじゃん。」

裕也君はくるっと向きを変えて帰っていきました。


これは私が悪いのです・・・。本当に私だけが悪いです。裕也君、ごめんね・・・・。

裕也君にとって嫌な誕生日にしてしまいました。





あれから数日たちましたが、学校でも口をきいてくれません。

私たちが一緒に帰らなくなったことから別れた噂が立っていました。裕也君はモテるので言い寄る女子たちがたくさんいたようですが、面倒なのか相手にしていませんでした。正直、それを見てほっとしていました。

由香ちゃんだけは私たちを信じて、仲直りすることを望んでいました。


「麗華、きちんと話したほうがいいよ。たしかに麗華が悪いけどさ、口下手を理由に逃げてる渡井君も駄目だよ。」

由香ちゃん・・・。

「家に行ってでも話してきなよ。」

裕也君からはもう話しかけてくれないでしょう。それなら、私から行くしかありません。


ですがその前に、ちょっとした力を借りることにしました。



私は指輪を買った雑貨店にいました。

仲直りの指輪があれば・・・と思ったのです。やはりこういうことを願っているということは、私は裕也君が好きなのです。

「麗華さん?」

振り向くと、朋也君がいました。

「女友達が多いとこういうお店にもよく立ち寄るんですよ。こんなスピ系に頼るなんて、新しい恋愛でも探しに来たんですか?」

「違うの・・・。裕也君と仲直りがしたいけど自信がないから、運気に頼ろうとしたの。」

「やっぱり喧嘩したんですね。俺と口きいてくれないから家でも困ってるんですよねえ。」

そういいながらも顔は笑っていました。

「麗華さん、本当に俺にしたらいいのに。どうせ裕也じゃ満足できてないんでしょ?」

もう半分嫌われたようなものです。完全に嫌われてしまったほうがいいかもしれません・・・。

「おい!」

その時、腕を勢いよく引っ張られました。

「本当に朋也のところに行く気だったのかよ!?」

裕也君でした。

「俺は麗華が好きだ。可愛いなんていつも思ってる。これ以上いい女はいない。」

裕也君!?

言わないとわからないとはいいましたが、こんなに言われてしまうと戸惑ってしまいます。

「何?もう仲直りしに来たの?」

「朋也には関係ないだろ。麗華にまで手を出すなんて、もう本当に許さない。」

「だって・・・裕也が悪いんだろ?」

どういうこと?

「裕也が珍しくデレデレしまくってるからどんな女かと思って品定めしようとしたら本当に美人な女連れてくるし…。こんな美人連れてこられたら奪いたくなるだろ!俺、麗華さんなら本当に大事にしようって思ったのに!」

「はあ?何言ってんだよ。他に女いるだろ。」

「本気になったのは初めてなんだよ!」

朋也君・・・私に本気だなんて。

「麗華さん、裕也は喋らない、なんて言ってましたけど、家だと今日も可愛かったとかあのしぐさがよかったとか言ってずっとのろけてますよ。」

「ちょ、朋也・・・。」

すると、スマホを取り出して私に何かを聞かせ始めました。

『みんな気づいてないけど麗華は可愛いし、みんなに優しいし、上品だし、スタイルもいいんだ~。』

「朋也!なんてセリフ録音してんだ!!!」

裕也君、真っ赤っか・・・。

朋也君は録音を聞かせた後にどこかに行ってしまいました。


「裕也君、今のは本当なの?」

「・・・本当だよ。家ではいつもあんなこと言ってる。俺、変態みたいだな。」

「裕也君、ごめんね。一度好きって言ってもらえてるのに、私は不安になってて、バカだった。」

「いいんだよ。付き合えたことで安心してた俺もいけなかったよ。ところで、なんでここにいたんだ?麗華の友達に聞いたらこのお店にいるって言われたから来てみたんだ。」

「仲直りの指輪を探そうとしてたの。自分だけでは不安だったから。」

「でも、今つけてるやつがあるだろ。それで恋愛運があがるんだから、俺たちのこと見守ってくれるよ。だからもう指輪買うな。」

「うん!」

きっと、ずっと見守ってくれていたのですね。











「麗華~。」

「なに?」

「可愛い。」

「そればっかりじゃない。」

「麗華が不安にならないように言ってる。」

あれから裕也君は、気持ちを私に全部伝えてくれるようになりました。

嬉しいけれど、幸せなのですけれど、正直私、裕也君をかっこいいと思わなくなりました。私の前だとクールなイメージが崩れたからでしょう。

「隣の部屋でラブラブするな!うるさい!」

朋也君がドアの前で叫んでいました。

「朋也も悔しかったら彼女作れよ。」

「うるせー!」

「裕也君、あまりからかっちゃ駄目よ。」

「朋也をかばうの?あいつはまだ麗華を諦められてないみたいだぞ。」

今の一番の困り事はこれです。朋也君が私にしつこく言い寄るのですが、私はそのたびに裕也君がいるから、としか言えません。

「でも、そうやって誰でも気に掛けるところが好きだよ。」


でも私、前より裕也君が好きになりました。

私が不安にならないことを一番に考えてくれるからです。


裕也君、幸せになろうね。






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