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亡日  作者: 森 神奈


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第四章 亡日

 夜の闇は、いつもより重かった。

 ベッドに寝転び、スマホの画面を開く。

 ラベンダーに送ろうとしたメッセージは、最後まで打ち切れずに止まったまま。

 ――「愛せなかった。でも……話を聞いてくれてありがとう」

 指先が震える。送る勇気も、返事を待つ余裕もないまま、ただ画面を握りしめていた。

 窓の外には、街の明かりがぽつぽつと灯っている。誰も私のことなんて、考えていない。

 類の小説を開く。

 そこには私に似た少女が、必死に誰かを愛そうとする姿が描かれていた。

 必死に、でも届かない。

 まるで私そのものだった。

 胸が締めつけられ、息ができなくなる。

 涙は止まらなかった。

 そして、もうこれ以上、自分を責めることも、愛せない自分を抱え続けることも、耐えられないと思った。

 翌朝――ラベンダーが、心配して私の家を訪れた。

 以前、現実で会ったことがある。だから住所も知っていた。

 呼びかけても返事はない。ドアを押すと、重く閉ざされた空間の中に、私が横たわっていた。

 机の上には、閉じられたスマホと、読みかけの類の小説。

 未読のメッセージが光っている。

 それを見て、ラベンダーはただ立ち尽くした。

 ――私の最後の日々は、こうして誰かの目に残った。

 けれど、愛せなかった私は、もう戻らない。


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