表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡日  作者: 森 神奈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/8

第三章 崩壊

 類の言葉は、刃物よりも鋭く胸に突き刺さった。

 「……君、やっぱり俺のこと好きじゃないんだろ」

 放課後、校門の前。いつもの帰り道で、唐突にそう告げられた。

 「努力はしたよ。でも、笑ってくれない。手を握っても、遠くにいる気がする」

 彼の声は震えていた。怒っているのではなく、泣き出しそうなほどに。

 私は言葉を返せなかった。返そうとすればするほど、自分の空っぽが露わになりそうで。

 ――私は、本当に、彼を愛していないのか。

 問いを口にできないまま、背を向けた彼の後ろ姿を見送った。

 その帰り道、学校の裏庭を覗くと、ミケの姿がなかった。

 昨日まで毎日のようにそこにいたのに。

 胸がざわついて、翌朝も、翌日も探した。けれど、ミケは戻らなかった。

 ある日、通学路の交差点に小さな花束が置かれているのを見つけた。

 ……分かってしまった。

 「嘘、でしょ……?」

 膝が震え、視界がにじんだ。私を無条件で受け入れてくれる唯一の存在さえ、消えてしまった。

 病院に行っても、何も変わらなかった。

 篠原先生はカルテに目を落としたまま、冷たい声で言い放つ。

 「彼氏を大事にできないのは、君の病気のせいだよ。普通の子なら、もっと上手くやれる」

 その言葉が決定的だった。

 ――やっぱり、全部私が悪いんだ。

 彼を愛せないのも、猫を救えなかったのも。私が壊れているせい。

 帰り道、街はやけに明るく見えた。

 人々の笑い声が、耳を刺す。

 私には届かない光の中で、私は確かに、独りだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ