閉ざされた穴
「おい、動くな!」
振り返ると、そこには黒装束に身を包んだ男が、杖を向けてこちらを睨んでいる。
「動くなと言っているだろう」
「分かった・・・動かないから・・・」
男は懐疑そうにこちらを見ている。
「その女の名は?」
「えっ?」
気が動転していて、一瞬理解が追い付かなかった。
「その背中におぶっている女の名だ」
「あ・・・えっと・・・」
シュバッ!!
男が杖を振ると、杖の先端からまばゆい光が俺に向かって飛んできた。
「ぐあっ!!」
っと声を上げると同時に意識が遠のいていくのを感じた。
気が付くと俺は、捕まっていた。
周囲には、黒装束に身を包んだ男たち、数名のエルフ、近未来的な武装をしたロボットが何体かいる。
「ここは・・・、はっ?!!」
記憶の中のある場所と一致した、俺が以前ARJECに捕まった部屋だ。
「起きたか・・・盗賊よ」
目の前には黒装束に身を包んだ初老の男がいた。
「盗賊・・・何の話だ?(確かこの部屋って・・・)」
ハッと気が付いた俺は、辺りを見回し、穴の位置と思わしき場所を確認した。
「穴が・・・塞がれてる・・・?」
記憶の中では壁に開けられていたはずの穴が、黒魔術のようなもので閉ざされている。
「おい、盗賊よ、何をジロジロと見てるんだ?」
初老の男が懐疑そうにこちらを見ている。
ウィーーーン!
「なんだっ?!」
慌てて音のする方向を確認する。
「ドウスル?ショブンスルカ?」
武装ロボットがこちらに指先を向けている。
「やれ」
目の前の初老の男がそう呟くと、武装ロボットが武器を構えた。