人間兵器
「魔女の国では・・・人体合成術が使用されていた可能性があり・・・それを知ったオールド上官は何者かに殺されてしまったと・・・魔王様はそうお考えで?」
「あぁ、そうだ」
三人は神妙な面持ちで話を続ける。
「魔女の国は禁術に手を出していた・・・と?」
「あぁ、だがそれだけじゃない。オールドの報告では、魔女の国では魔法の研究についても、我が国を上回るレベルで進んでいるとの情報だった。報告の中には、魔女の国では、世代を重ねるごとに魔力が増強されるパターンが特定されている、との記載もあった」
「それって、つまり・・・?」
「時間が経つごとに、いや、世代を追うごとに魔女の力は増強されていくってことだ」
「そんなことが・・・ありえるんですか?」
「分からない。だが、一般的に魔男と魔女は同程度の魔力を持っているとされている」
「つまり・・・増強される魔女の力に対抗するには、我々も力を増強せねばならないってことですね」
「そういうことだ、だが我々には魔男の力を増強する術はない、というよりその術を知らない」
「だから、人間を強くするしかない・・・そういうことですね?魔王様」
「なんて惨いことを・・・いくら国のためだからと言っても・・・」
「他に方法は無かったのですか・・・?」
「なら逆に二人に問いたい。何か他に良い案があったか?」
「・・・」
「・・・」
「ないだろう?」
「えぇ・・・確かに」
「それに、人間兵器を作ろうと言い出したのは、私じゃない。ワルツだ」
「ワルツ先生がっ!??嘘だっ!」
「嘘じゃない。あの孤児院・・・いや、あの施設を作ったのはワルツだ」
「本当・・・なんですね・・・」
「ワルツも相当怯えていたようだった・・・」
「え・・・?」
「君が一番分かっている通り、人間兵器は完成したんだ。魔王をも凌駕する能力を、君は手に入れた」
「・・・」
「国のためとはいえ、日に日に育っていく君の強大な力が、間違った方向に使われれば、どんなに恐ろしいことが待っていることだろう。ワルツはずっと・・・怯えていたよ」
「先生・・・」
私は自らの過去を思い出し、気づくと目から涙が流れていた。
「ワルツの不安は無用だったようだな・・・」
「ですね、魔王様」
「え?」
「何でもない。では、本題に入ろうか、クレッシェンド」
「はい」
「あの子を一体、どうしようか・・・」
三人は、木に縛り付けられた子供の方を見た。