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魔王は月を見ながら、静かに語り始めた。


かつてこの国には何も無かったという。

争いも戦争も、魔男も、魔女も、そして魔法さえも。

人々は平穏無事に暮らしていたという。

そんなある日のこと、謎の疫病が国中に蔓延し始めたという。

死者数は人口の半分にまで及んだという。

疫病に侵されながらも生き残った人間の中には、不思議な力を持った人間が現れ始めたという。

治癒能力、超人的な肉体能力、発火能力、氷結能力、彼らがやがて魔法使いとなっていく。

初めは人々は、魔法をありがたいものだと思い、彼らを崇め信仰した。

次第に人間の中にも、魔法を脅威とみなし排除しようという思想が芽生え、やがてその思想は戦争へと発展した。

多くの犠牲を伴った戦争は、和平を志す人々によって終結された。

そして、人間と魔法使いが共存する社会が実現したのであった。

しかし、その和平も長くは続かず、些細な出来事から魔男と魔女の戦争が勃発した。

私の曽祖父にあたる初代魔王は、命がけで停戦交渉を続けたが、魔女側はそれを断固拒否。

初代魔王は人間たちと結託し、国内から全ての魔女を追放することを決意した。

人間たちの中でも、魔女を支援するものは同じく徹底的に国内から追放していった。

訪れた一時の平穏、しかし初代魔王に届いた一通の手紙で事態は変わってしまった。

手紙は"魔女の国"からで、内容は全面戦争も(いと)わないという宣戦布告であった。

追放された島で魔女たちと人間たちは国家を建設し、粛々と魔男たちへの復讐を目論んでいたのである。

国の存亡危機であると認識した初代魔王は、単身で"魔女の国"を来訪。

自らの右腕を差し出し、"魔女の国"との不可侵条約を結ぶことに成功する。

お互いに一切関与せず、別々の国として歩んでいこう、という内容であった。

以来、不可侵条約の元、魔男の国と魔女の国は一切の関係を断ってきた。

長きに渡る断交の末、人々はやがて"魔女の国"があるということも、さらには魔女の存在さえも忘れ去っていったのである。

ある意味、初代魔王がかつて目指した平和な社会が実現されたといっても過言ではないと思っていた。










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