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クレッシェンド

「クレッシェンド!またお前か!!」

「す、すいません!!ワルツ先生」

小学生の私(魔王)は、いたずら好きの悪ガキだった。

子供ながらに私は、大人なみの能力を持っていた。

「こっちだバーカ!!」

「あっ、おいクレッシェンド!!どこへ行く!!」

魔男の中でも屈指の実力を持つワルツ先生ですら、私のスピードに追い付くことはできなかった。


中学校の私は、周りとうまく馴染めずに荒くれていた。

「クレッシェンド!!また同級生と喧嘩したのか!」

「してねぇよ」

「クレッシェンド、正直に言え!!」

「違うの、先生・・・」

横にいた女の子が、泣きながら呟く。

「なんだって、シンディア?どういうことだ?」

「クレッシェンドは悪くないんだよぉ・・・」

「ん?悪くないって?」

「あいつらが、シンディアのこと"哀れな孤児"って呼んだから、怒ったクレッシェンドが・・・」

パシンッ!!

「いっ!?何すんだよワルッ!?」

ガバッ!

「なっ?!!」「えっ!?」

ワルツ先生は二人を抱きしめる。

「いいか、お前らは孤児なんかじゃない。。。俺の子だ」


高校生の私は、小遣い稼ぎに勤しんでいた。

「どうだ、ばあさん。これで治っただろう?」

「クレッシェンド、いつもありがとうね、はいこれお駄賃」

「ありがと・・・ってワルツ?!!」

ワルツ先生がお駄賃をもらおうとする私の腕をつかんでいた。

「ばあさん!!こいつにお金渡しちゃダメ!」

「何でだよ!治療して金もらう、医者と何が違うってんだ!?」

「あほか!治療魔法は、その人の寿命を消費する!ばあさんを殺す気か!!」

「そうなのかい?!クレッシェンド?」

ばあさんが驚いた顔で私の方を見る。

「悪いのかよ!!」

「開き直るつもりか、クレッシェンド!」

「いや、そうじゃなくて!それでいいじゃねぇかよ!」

「えっ?どういうことなの、クレッシェンド?」

「確かに、治療魔法を使えば寿命を消費するけど、裏を返せば寿命まで苦しまずに健康でいられるってことだ」

「あのなぁ、クレッシェンド・・・」

「大体おかしいじゃねぇかよ!」

「何がだ?」

「俺たち魔男(おとこ)は自由に魔法も使えて、治療魔法使って健康のまま死ねる」

「クレッシェンド・・・」

「だけど、ばあさんたち女は、魔法を使えないから苦しみの中で死んでいくんだぞ。それに・・・」

「それに・・・?」

「クレッシェンド・・・もういいんだよ、それぐらいにしてあげなさい。ワルツ先生も、ね?」

「ちょっと待って、ばあさん。続けさせて」

「何だよ・・・クレッシェンド、まだ言い足りないのか?」


「それに・・・ばあさんが前に言ってたよ。女でも魔法が使える"魔女"ってのがいるって」

「おまえ!!ってか、ばあさん、どこでその情報を!!??」

ガッシャーーーン!!!!

玄関の方から大きな音が聞こえた。

「な、なんだ!!!??」


ゾロゾロッ

「おっ、いたいたワルツ発見!」

「だ、誰だお前ら!?」


グサッ!!

「がはっ!!!」

男の槍がワルツの腹を貫いた。


「ワルツッ!!!!!!」

「邪魔だよクソガキ」

ドゴォオーーーーーーン!!

女の蹴りがクレッシェンドを吹き飛ばす。

「ぐはっ!!!(嘘だろ・・・避けたはずなのに!?人間じゃねぇ!この女・・・)」

倒れ込むクレッシェンド


「おい・・おまえら一体何もんだ?」

ワルツは血をダラダラ垂らしながら、二人に問いかける。


「そんなことはどうだって良いだろうがよ」

「ちっ・・・」


「私は"魔女"だ」

「なっ!!!??」

「お、おい!!バカ!言うなって!」

「良いだろ、どうせこいつら皆死ぬんだからさ」


ガッ!

「あ・・・ぐぅあ・・・」

女が、ばあさんの首を掴み持ち上げる

「おい、ばあさん。私の娘をどこにやった?」

「グッ・・・し、私しゃ知らないよ・・・」

「私の娘を・・・どこへやったんだぁあああー!答えろぉおお!!!」

女が、ばあさんの首をさらに強く締める

「ぐぁああ・・・この・・・"魔女"が・・・」


「おい、ばあさん殺す気か? ばあさん死んじまったら居場所わかんねぇだろうが」

「ちっ・・・」

ドサッ!

「ゲェホッ!ゲェホッ!ギェホッ!ギェホッ!」

「おい、ばあさん、死にたくなけりゃ娘のいばっ」

ドゴォオオオーーーン!!!

クレッシェンドの蹴りが魔女の身体を勢いよく吹っ飛ばす。

「お返しだ、クソアマ」


「ぐっ・・・」

女は倒れ込んで動けない。


「このクソガキぃい!!!」


ドゴォオーーーーーーン!!!

「ぐはっ!!」

クレッシェンドの蹴りが男の身体を勢いよく吹っ飛ばす。


「よくやった、クレッ・・・シェン・・・」

バタッ!

倒れ込むワルツ、その表情は穏やかだった。


「先生!!先生!!!おいっ!しっかりしろ!!」

ワルツを抱き上げるクレッシェンド。

「クレッシェンド!治療魔法!!」

「もうやってる!!!」

ワルツの身体に力はなかった。

「クレッシェンド・・・」

「先生!!!先生!!!」


「クレッシェンド・・・」

ばあさんは、悲しそうにクレッシェンドの肩に手を置いた。


「目を覚ましてくれ!!!せんせぇええええ!!!」












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