『在衡の速記、勤務ぶり、格別のこと』
在衡の大臣は、速記の知識が図抜けているというほどではなかったが、帝から御下問があるたびに、明確にお答え申し上げた。これは、宮中に参内するたびに、牛車の中で、復習かねがね読んでいるつもりの速記テキストが、たまたまその日に帝が御下問になる箇所と一致するということが続いているためであったという。そこで、帝は、在衡の大臣に深い御信頼をお寄せになるのだった。在衡の大臣は、勤務ぶりも真面目で、誰よりも早くに参内した。ある大嵐の日、左衛門の警備の者が、在衡の大臣といえども参内できないほどの嵐です、と、嵐の強さを比喩しようとしたところ、言い終わらないうちに在衡の大臣が参内したということがあったという。
教訓:まあ、速記をやっている人って、大体が、仕事に真面目で、信頼できる人ですよね。