【第2話】ヘイル王国第二騎士団副隊長ロゼ
「ソニア様、あなたがいないと集会が始まらないのですよ。速く来てください。」
一瞬誰に向かって怒鳴っているのか分からなかったが女の子の目線で俺に向かって怒鳴っているのだと理解した。
「俺はソニアと言うのか?」
女の子に向かって問うと女の子はハテナを浮かべながら、
「俺?しかも自分の名前まで忘れて寝ぼけすぎです。水でも被って目を覚ましてください。」
女の子は腰に巻いているバックから大きめの分厚い古本を取り出し広げ、何かを唱えた。
そして次の瞬間目の前から水が襲ってきて一瞬で全身がベチョベチョになった。
(魔法。。)
「これで覚めましたか?早くベットから出てきて集会に行きますよ。」
(水かけられる前からばっちり目覚めてるよ。。)
今どういう原理で水が出てきたのか聞きたいがこれ以上聞くと火を放たれそうなので顔を縦に振ってベットから出る。
(いや、でも名前だけは聞いとくか。)
「君の名前は?」
「まだ寝ぼけているのですか。次は火放ちますよ。」
(やはり火の魔法もあるのか。)
「まぁいいです。私の名前はロゼです。思い出しましたか?」
ため息まじりに言われ誰だよ。という言葉を上書きするように、思い出した。思い出した。と言った。
どうやら本当に寝ている間何かがあって知らない世界の巨乳美女になってしまったらしい。
昨日までの俺の体はどうなっているのか、ここはどこなのか、昨日までの世界に戻れるのか、何一つわからない。
分かっていることは、巨乳美女になったことぐらいだ。
「私は先に行っておきますのですぐに来てください。」
(やばい、集会の場所なんかわかるわけがない。)
「いや、ロゼと一緒に行きたい。待っててくれ。」
急に心臓が速くなった。
不本意だが今言ったことは輝いているやつの言うセリフだ。
21年間影の役割をしてきた僕が言うセリフではない。
そもそも俺の人生の中で女の子と話した時間を合わせても一日にならないぐらい女の子と話した経験がない。
そんな俺が得体の知れない女の子ではあるが女の子にこんな臭いセリフを言うなんてと吐き気までしてきた。
「何言っているのですか。大体そういう言葉は男が好意ある女に言う言葉でしょ。女が女に言ってどうするのですか。」
(そうか、今俺は女なんだ。)
少し安堵していると十秒だけ待ちます。と言われロゼのカウントダウンが始まる。
急いで準備をしようとしたが何を準備したらいいのかわからず、
「何を準備したらいい?」
とロゼに問うと、
「は?寝ぼけてるんじゃなくてアホになったのですか。」
と言い放たれ冷たい眼差しを向けられた。
(アホになったのではなく中身が変わったのだ。。)
「なぜか分からないですが着替えは終わっているようですので剣とマギアブックだけでいいです。剣は枕元に置いてあります。マギアブックは多分机の上のバックの中に入っているのでバックごと持ってきてください。」
言われるがまま剣とマギアブックとやらが入っているバックを持って見知らぬ俺の部屋を出た。
部屋から出ると王宮のような廊下が奥まで続いている。
「集会の場までワープします。」
(ワープ?)
ロゼはマギアブックと言われている古本を広げワープと叫んだ。
そしてロゼを中心に半径1メートルが紫色に光だし次の瞬間ざっと数百人の兵士の格好をした人達が整列している前に移動した。
(本当にワープした。)
さっきの水に襲われた時ほどはビックリしなかったがここが俺が昨日までいた世界と似ても似つかない世界なのだと恐怖が襲ってきた。
(俺はこの先どうなる。昨日までの世界には二度と戻れないのか。)
「ソニア、遅刻だ。立場をわきまえろ。」
反射的にすみません。と言葉が口から出た。
その冷淡で力強い声の持ち主を目の前にいるロゼを除く5人から探すとすぐに見つかった。
(この人だろう。)
鍛え抜かれた屈強な筋肉をまとっている男が静かに俺を睨んでいた。
「ガイル騎士団長聞いてください。起こしに行ったら自分のことも私のことも忘れていたのですよ。ムカつくから水ぶっかけておきました。」
「ソニア、集会が終わったあと俺のとこに来い。話がある。」
ロゼの話を完全に無視して俺にそう言った。
ロゼを見ると頬を膨らましガイルを睨んでいた。
「集会を始める。」
ガイルが短く言い放つと目の前にいる兵士の格好をした人たちが膝まずき、装備のすれる音が集会の場に力強く響いた。
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