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95話 あんたは一体?

「くあああっ!! お、俺の強化された硬質化スキルが!? こ、この女、一体どんなスキル、を……」

「私のスキルというか、この剣が特別だから。っていうのと……」


 陽葵さんはそう言いながら地面に転がる橋田から俺に視線を移して微笑みかけてきた。


 おそらく俺が神測で得た情報が契約モンスターであるハチを通じて陽葵さんに伝達されていたのだろう。


 戦闘におけるコンビネーションで言葉を使わず、そして一瞬で仲間に作戦や思考を伝達できるというのは強み。


 だけどこれって最悪の場合お互いの知られたくないことまで伝達されたり……。

 いや、今はそんなことを考えるのは止めよう。


 錦さんが負傷してしまったとはいえ、橋田はこれで動けなくなったのだから。


「――よっと、取り敢えずこれで拘束して……。いやぁ、にしても俺がこんな奴程度にここまでやられるなんて……。やっぱり定期的に強い奴と戦闘してレベル上げをしないと駄目だな」


 俺と陽葵さんがアイコンタクトをとっているといつの間にか錦さんが橋田の元に移動していて、どこにしまっていたのか、これまたいつの間にか手に持っていた手錠で橋田を拘束した。


「……。それにしても、脱獄者ですか。まさかこいつ以外にも外に逃げたりとかしてないですよね?」


 この場の張り詰めた空気がやや緩和されると宮下さんがポツリと呟いた。


 そういえば橋田がここに来た直後補給場がどうのこうのだとか付与されたスキルがどうのこうのとか言ってて……あの言葉から察するに今回の脱獄は1人で行われたものである可能性は低いか。


「外に出ようと通路や建物の出入り口を通ったならばセキュリティスキルに引っかかる。こいつがここにいるのはここやこいつが言っていた補給場っていうのがセキュリティスキル外だったから。だから流石にダンジョン街には逃げていない、逃げられないはずだ。ただそれは裏を返せば――」

「セキュリティスキルのない場所なら自在に移動できる。しかも監視の目を容易に盗んだ上で、ですか?」

「恥ずかしながら、そういうことになるな」


 錦さんの言葉を途中で遮って発言した宮下さん。

 その顔は呆れたようなものに見え、ついつい錦さんも申し訳なさそうにして見せる。


 建物の出入り口や通路を通れない、つまりそれは他のルートを開拓できたなら脱獄ができるということで……おそらくこの間にも他の囚人たちはダンジョンを通じて外に出ようとしている、或いは既に出ている可能性まで――


「――く、ふふ」


 宮下さんの顔に焦りの色が見え始めると、拘束されていた橋田が薄気味悪く笑い始めた。

 自分たちの行動がバレ、高速までされているのだから笑っていられるような場面ではないはずなのに……。


「こいつ、気に食わない。ちょっと殴って気を失わせてもいい?」

「いやいやいや! 苺、いくら脱獄犯とはいえそれはさぁ――」

「は、お子様の攻撃程度で俺の硬質化スキルがどうにかなるとでも思ったのか?」

「……すさみ

「お、おい苺!」


 橋田の笑い声を不快に感じた苺。

 そしてそんな苺を煽る橋田。


 ついには本気でスキルを発動させた苺に宮下さんは声を荒げた。


 錦さんは怪我で辛そうだし、宮下さんはパワータイプでもない。……。仕方ない、ここは俺が止めに入るか――


「ふふ、残念時間だ。じゃあなちっこいの」


 その言葉と共に苺の斧は空を切り、橋田は……その場から姿を消した。


「え? き、消えた? 殺しちゃっ、た?」

「……。移動系スキル、か。一応あの手錠にはスキル封印効果が付与されてるんだが……なるほど、脱獄犯たちはこれも無効化できると。てっきりこれを外す何かを手に入れただけかと思ったんだが、手錠の効果を無効化できるほどのスキルをあいつ、或いはその仲間が発現させたっぽいな。そんでもって多分それは……」


 橋田の姿が消えたことで戸惑う苺。

 それに比べ錦さんは流石この施設の長といった様子で瞬時に頭を回転させて分析、その後にその視線を拘束された人に向ける。


「俺はここの施設の長をしてる錦っていう人間だ。なぁ、そんなスキルを与えたのってあんただよな? あんたは一体――」

「話し掛けるな! 地上の人間の手下が! お前など、お前のような奴など――」

「じゃあ私の話なら聞いてくれる? 私はハチ。ダンジョンで生まれたモンスターで……多分あなたが作った存在でしょ?」

お読みいただきありがとうございます。

モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。

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