94話 賞賛
「まさか、人間が、自力で……レベル100に、到達できて、しかも、条件まで自分で……。お前、俺たちの力に――」
「お前……いい加減にしろよ!!」
「は、ははは……。お前がそれを言うのか? 馬鹿みたいに硬い身体しやがってよ。だけど、そうだな。そろそろ遊ぶのは止めか。これ以上は俺も流石にしんどいから、なっ!」
「おまっ!? 何をっ!?」
精気が甦ったかのように、言葉を紡ぐ拘束されている人にの話に耳を傾けていると、錦さんと橋田の戦いに変化が起きた。
血を流しすぎたのか、ふらふらと身体をよろけさせる錦さんが橋田の身体を抱き抱えたのだ。
しかも錦さんは橋田を無理矢理持ち上げると、そのまま俺の元までそれを放って――
「すまん! あとは任せた!」
「くっ! 空中に放られたからってこっちには……な、動かない、だと!?」
橋田は空中からまた広範囲の攻撃を繰り出そうとしたが、錦さんの攻撃は内側に衝撃を与え続け、ダメージを蓄積させていたのだろう、橋田の動きは鈍いどころか動かすこともままならないようだ。
つまり今の橋田はただの的でしかないということ……。
なら、遠慮なく、死なない程度に攻撃させてもらおうか。
『ハチ! 俺の身体をあそこまで』
『了解。でも、私の作った剣じゃあれを突破できないわよ』
『今の俺なら、多分打撃でなんとかなる』
『……。また強化されて……。遥様ってモンスターの私なんかより、拘束されたあれよりよっぽど化物ね。……中級魔法、水突柱』
俺の足元から勢いよく水が噴き出し、身体を持ち上げてくれる。
橋田よりも少しだけ高く飛び上がった俺は、足を高く振り上げ、背中に踵落としを喰らわせる。
衝撃によって身体に纏わりつくそれは割れ、橋田は地面に思い切り衝突。
「ぐっはっ! くそ、くそくそくそくそくそくそ!! なんだよ! 施設長以外の奴がなんでこんなに強いんだよ! オロチまでいやがるし、補給班なんて簡単な役職じゃねえのかよ!……。あと数分。こうなりゃ女子供を人質に――」
「舐めないで」
手を抜きすぎたと反省するべきなのか、それともその硬さを流石と褒めるべきなのか……。
意識を保ち続ける橋田はよろめきながらも、立ち上がる。
しかし、戦闘意欲を滾らせたままだった苺がその巨大な斧を振動させながら攻撃を仕掛けた。
それに対して橋田は手を前にかざしながら、うっすらだが再び身体を硬くしようと、それを纏わせ始めた。
このままだと攻撃を防がれるどころか、カウンターをもらってしまう可能性が――
「私のことも忘れないでほしいわ」
「な、に……」
俺の頭に過った不安を払拭するように、陽葵さんが橋田の両手足の関節を切断してみせたのだった。
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