表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/408

83話 消失

「単純に興味がなかっただけかも。私、ランク10になるまで、生活のため、何よりも探索が優先だった。だから学校も中学まで」

「……。中学は地上の中学校だったか?」

「こっち。私の時はもう、地上でってことなくなった。ちゃんとこっちに学校できてたから」

「そうか……」

「まぁ今思えばわざわざ地上の学校に通う必要なんてないものね。そもそも登校方法も特殊で……」

「……。陽葵さんも違和感を感じましたか」


 何故今の今まで不思議と思わなかったのか。

 俺たちはその道のりを知らない。知らないのが当たり前。

 自分が……ここに暮らしているということ、ダンジョンという単語すら地上で発した記憶がない。


「私たちってもしかして……。うっ」

「う、あ……」

「陽葵さん、苺、だいじょ――。つっ……」


 頭痛。それも強烈な。

 駄目だ。余計なことは考えられなくなる。

 これは……昨日の、ハチと似た突発的な――


「危ない危ないイベント来週まで大丈夫だったわ。0と8を見間違うなんて……。私まだまだ若いんだけどなぁ。ね、遥様もこのまだぴっちぴちだって思……。ってどうしたのよみんなして」

「いや、その……。あれ?俺……」

「私まだ寝ぼけてたのかしら?」

「私も」


 頭痛が消えるのと同時に脳内から何かがすっと消えていった。

 大事なことだった気はするが、全く思い出せない。


「えっと……。各自準備体操が終わったら、オススメのランニングコースを教えてあげるわね」

「なんか歯切れ悪いわね陽葵。もしかしてお通じ良くないとか?そういえば遥様が起きるまで随分と長く――」

「みんな、体操は入念にね! 私のランニングはハイペース、マラソン大会だと思って覚悟したほうがいいわよ!」


 陽葵さんがハチの挑発ともとれる言葉を遮ると、俺たちはまるで何もなかったかのように、ランニングを始め、いつの間にかモヤついた気持ちは晴れ……るどころか、そんなものを考える余裕すらなくなっていた。



「――み、みなさん。おはようございます……。なんか顔青白いですけど大丈夫ですか?」

「あはは、大丈夫ですよ。ちょっとハッスルしちゃっただけらしいので。な、苺」

「みやも明日から来た方が、いい」

「宮平さん、早朝から運動は気持ちが……いいですよ」

「遥様の言う通りだわ……」

「あはは。僕はジムに通ってるから……」


 探索者協会受付。

 今日は京極さんとは別の方みたいで、第一声は緊張した様子だったが、俺たちの顔を見るなり、緊張はどこへやら、咄嗟に心配をしてくれた。

 ちなみに苺曰くここを担当している方は、モンスターとの契約について知ってはいるが、京極さん以外会長の秘密は知らないらしい。


 陽葵さんの鍛練。あれは朝から行うものじゃない。

 昨晩のすき焼きが口から出てきそうだ。


「それで、褒賞金についてなんですけど」

「はい。宮平さんにと、お預かりしています。でも本当に現金でよろしいんですか?」

「はい。直ぐに支払う用があるので」

「分かりました。直ぐに御用意致します。それと、施設の件ですが、更正施設の隣でどうかと提案が」

「更正施設……あんまりいい場所じゃないですね。あそこ喚き声とか漏れてて……」

「そうなんですけど、あそこなら万が一バレた時、探索者たちを押さえつけるためにモンスターを近くに用意していた、と言い訳ができるそうなので」

「なるほど、それで」

「はい。という訳で今お連れのモンスターたちを狭くて申し訳ないのは分かっているんですけど、その更正施設に預けられるよう話をつけてあってですね。良ければ今日そこのご紹介もしたいな、と」

「メロリンたちの仮屋……見に行く」

「預かり所ね……私もあの子達のことを考えると……。遥様、一緒について行くのはどうかしら?」

お読みいただきありがとうございます。

モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ