82話 気づき
「おはよ」
「本当に来たのか」
「あら、宮平さんはどうしたの?」
「サボり。多分昼過ぎまで寝てる。そっちこそ、ハチいないの?」
「ハチは……」
「あがあぁあぁぁああぁあっ!! あと半日もないのに……。これじゃイベント間に合わないわよ!」
「起きてからずっとあんな感じなんだよな」
「ふーん。元気そうでなにより」
翌日。ダンジョン内で約束した通り、苺が俺の家を訪ねて来た。
知らなかったのだが、いつの間にか陽葵さんと苺は連絡先の交換を済ませていたようだ。
宮平さんは鍛練に不参加のようだが、その気持ちは痛いほど分かる。
現在朝9時。
いつもならそこまで辛い時間帯ではないが、昨日は晩御飯の後片付け等々、なんだかんだ2人が寝静まった3時頃に就寝。
疲れていたこともあってもう少し寝ていたい気持ちが強い。
無理矢理レベル上げをしていた時の慣れで、ずっと起きていたり、1、2時間の仮眠は得意なのだが、しっかり寝ついてしまうとどうにも……。
「それじゃあ早速体操して10キロのランニングから――」
「待って。その前に……。メロリン、ミノラ、角だけ見せて」
苺が命令すると、契約しているモンスター2匹の一部が姿を現した。それもうっすらと。
家に置いてくるわけにもいかないだろうし、連れてきているのかな、とは思ったが、まさかこいつらにも鍛練を?
「参加者2名追加」
「いいけど……。モンスターが鍛練ってイメージ湧かないわね」
「ハチも鍛練しようとしてたから同じ。それにモンスターは人間に近づけば近づくだけ強く賢くなるみたい。レベルの上限も、今は80までだけど、だんだん契約者、人間に合わせられていく。遥、契約してるのに知らなかったの?」
「モンスターが人間に近づく……。元々ハチは人間らしい見た目で、しかもレベル100だったからな……。ハチも契約についてざっくりは知っていたみたいだが、それは初耳だ」
「……でも確かにハチは上限いっぱいって感じがする。でも、同調率がまだ100に届いていないなら、ハチもまだまだ人間に近く、遥みたいにレベル100を越えていけるかも……」
「ハチが強くなる可能性か……。今のままでも十分強いが、火竜と戦うってなればその必要性も高まるか。おい、聞いてたかハチ」
「ちょっと充電なくなって来たから中に戻らせてっていうか、今日だけはもう鍛練勘弁してもらってもいいかしら? このイベント逃すと次いつ来るか分からないのよ。限定アイテムはオンラインのランキング戦にも影響するから絶対必須で――」
「はぁ、分かったわ。多分それも人間に近くなる鍛練になるでしょ」
「やった! 流石陽葵は話が分かるわね!」
意気揚々と家に戻るハチ。
既に俺より人間らしい気がするのは俺だけか?
「それにしても……オンラインのランキング戦いなんて……今時なのね、ハチさん」
「オンライン……」
「どうしたの遥」
「いや、オンライン対戦とか、ネット掲示板とかコメント欄とか……言葉は聞いたことがあるが……。俺の周りに地上と繋がる、そういうのを利用している人ってあんまりいないなって」
「そうかしら? ほら、SNSとか動画サイトは……。あれ?よく見ると一般投稿ってダンジョン街専用なのかしらこれって。地上に住んでる一般の人の投稿全然ないわよ……。なんで私今までこんなことに気付かなかったのかしら」
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