69話 衝撃少女
「分かっていたことだけど、3階層ともなると大分探索者の数は減るね。この調子だと4階層なんて誰もいないんじゃないかな? あれはあれで貸し切りみたいでちょっと気持ち良いんだよね」
「結局のところ3階層以降はランク5以上じゃないと厳しいから、探索特需状態でも関係ないってことね。だったら次の階層でモンスターお披露目、この階層は――」
「私、やる」
3階層に侵入し辺りを見回すと、2階層のように活気に満ちた様子はなく、視界には個人で探索をしている人が数人。
3階層は下って直ぐに開けた場所があるのだが、モンスターたちはここが探索者にとって戦いやすい場所であることを理解しているのか、中々姿を見せない。
この階層のメインモンスターは確か、ダースウルフェン。
集団での狩に特化し、暗闇を生み出しては視界を奪うスキル『暗黒の息』を有していて、奇襲を仕掛けられた挙げ句、視界を奪われて全員散り散りになるのが全滅のパターンらしい。
攻略の鍵はまず索敵、それから指揮をとる群れのボスを速攻で叩くことらしいが……。
「その両斧は相手を仕留める段階になってから装備すれば良くないか?いくらパワーがあるからって、もしダークウルフェンが現れた場合、仲間たちに指示が出る前にボスとの距離を詰められるとは思えないぞ。そもそも遠距離の攻撃じゃないと間に合いそうもないが……。索敵だけでも手伝おうか?」
「大丈夫。それにもう、なんとなく場所分かった。……。ここ。『衝撃打』『衝撃打』『衝撃打』……」
「あ、おぅ……」
苺は右斜め前方に駆け出すと、正面の壁を何度も何度もその斧で殴りつけた。
すると、その壁の上方の一部が崩れ、1匹のモンスターが顔を出した。
どうやらダースウルフェンのボスはいつでも仕掛けられるように、壁に穴を開けてそこに暮らし、探索者の様子を窺っていたらしい。
襲いかかって来ないでいたのは、少ないとはいえ、やはりいつもより探索者の数が多かったからだろう。
だがまさかそれが仇となって、もっと危険な俺たちという存在がやってくるなんてな。
「ついてないね。このモンスターたち。でも、さっき聞いてきたスキルについての答えがこれで見れるかもよ」
「そうですね。ってこれ……」
俺たちが苺に視線を向けていると、あまりの衝撃により狼狽えていたボスが、危険な状況を打破するため、その口を大きく開けて仲間を呼び出した。
すると、地面のそこら中から寝惚けた様子のダースウルフェンが姿を現し、各々がスキル発動の準備に入り始めた。
だが……
「攻撃下に変更。皆、飛んで。……『流星衝撃波』」
そんなダースウルフェンたちよりも先に、苺の強烈な一撃が炸裂したのだった。
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