66話 ランク10の二人
「えっと君は? ダンジョンは危険だから侵入は……まぁ小学生でも戦えないわけじゃないとしても、2階層はやめておいた方が……」
「これでも18歳。よく見た目で判断されて、ダンジョンに入るのも止められること、あるけど……邪険にしないところも気に入った。顔は……」
自称18歳の少女は無表情のまま俺の顔を覗き込んで、品定めをするようにじっと見つめてくる。
子供に欲情することはないが、流石に超至近距離だと緊張する。
「暗いだけで、悪くない。お前、私と組んでガッポガッポ稼がない?取り敢えず今日中に10階層まで……。誰よりも速く、最高到達階層を更新してお金、それとモンスターを飼う場所――」
「こら! いくら相手がランク10の付き人だからって、それを話していいかどうかは確認出来てないだろ!」
「ごめん。苺、てっきり……」
「分かればいいって。そんなに怒ってないから、気にしすぎないでくれよ。ほら、飴ちゃんあるぞ」
「ん、ありがと」
少女の肩に置かれた手。
その陽気な声と、それに反する相変わらずの気配のなさはダンジョンないでも勿論健在。
探索者協会で会ったランク10の男性探索者は少女を飴を使って宥めると、今度は俺に視線を向けた。
「僕の相方が失礼したね。すまなかった」
「いえ、そのそんな、頭を下げられるほどのことはされていないので」
「そうか、それは良かった。この子、苺は関わりのある探索者を実際に戦って推し量ろうとする癖?みたいなものがあって……。まぁ、この戦闘を見せられたら流石の苺もその必要はないと判断したんだろうな」
「あなたたちも狩りを? あ、その前に名前――」
「並木遥、君だよね? さっきも会ったし、顔は当然、名前も知っているよ」
「そうですか」
「そっちの女性はハチさん……だったよね? 2人とも改めまして、僕の名前は宮平光四郎。ランク10の探索者さ。2人が何をどこまで知っているのか、そして2人が何者なのか、そういった知らせはまだ受けてないのだけど……あの受付を利用できているってことはそういうことなんだよね?」
「……。会長の秘密は知っています」
「そうか! あー良かった良かった! さっき苺のやつがうっかり口を滑らせたからちょっと焦ってたんだよ。同じ秘密を知る同士頑張ろうな」
「はい。よろしくお願いします」
差し出された手を握る。
顔に似合わずゴツゴツとした男らしい手だ。
陽気だがかなりの努力家なのだろう。
「……」
「?ど、どうしました?」
「いや、全力で、骨を折るつもりで握ってみたんだけど……。そうか、どうしました?か。さっきの戦闘にこの力、レベル4000は嘘じゃない。それに……僕と同じでモンスターと契約済みだね」
「モンスターと契約している探索者……。そうですか、あなたが――」
「お前、強かった。でもそれはモンスターの力を借りた場合。素の力がダメダメなら、同じ仕事、今後の作戦一緒は危険。念のため、試させてっ!」
宮平さんの探りを受けていると、いつの間にか俺たちの元を離れていた少女、苺の少し張った声がここまで響いてきた。
戦って推し量るにしても、場所は選んで欲しいものだ。
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