61話 チャンピオン
「まずは遥君と同じ剣を作ってくれるかしら?」
「……分かったわ。ま、私としても陽葵がどこまでやれるのか、契約者に対してなにをどのくらいまでしてあげられるか、リンドヴルムのやつみたいに使える魔法を共有できるのか……試しの場として利用させてもらうから。いい?色々試す前にkoされちゃ意味がないからね」
「心配する前に早く剣を用意してくれるかしら?オロチ戦は実力差があってあれだったけど、強敵と戦うのってやっぱり胸が高鳴るわ」
「ふふ。暴れるのが好きなところは、一緒。嫌いじゃないわよ。任せなさい、とびっきりの剣を作ってあげる」
ハチは笑みを浮かべながら手を口の中に突っ込んだ。
剣を作ると言っておきながら、奇行を始めたハチに俺と陽葵さんは若干顔を引攣らせた。
だがそんなことお構い無しに、雄叫びを上げるモンスターが遂に俺たちの前に姿を現した。
「ゴブリン……にしては随分とでかいな。名前は……。ゴブリンチャンピオン、か」
スキル『看破』でその名前が判明。
名前からしてゴブリンの上位種で間違いないだろうが、如何せん初めて聞くものだから、どれくらいの強さなのか、何ができるモンスターなのか、まるで分からない。
ここは『神測』も併用することにしよう。
『神測。敵総合能力D+。対応適正レベル110。弱点属性なし。2階層統率モンスターとして、発生。討伐した際、再発生まで3年必要』
「統率モンスター……。そんなの今まで聞いたことがない」
「統率? よく分からないけど、つまりはレアってことでしょ? 経験値も美味しいだろうし、素材もいくらで売れるのか楽しみだわ 」
『神測』の結果を少し呟くと、陽葵さんも不思議そうな顔を見せた。
2階層ということは他の階層にも似たようなモンスターが湧いているのか?
とにかく、対応適正レベルからして強さは5階層辺りから出現するケルベロス幼体と同じかそれ以上。
あくまで対応適正レベルは俺基準だから、一般探索者に直せば上位ランクにいがちな80辺りだと思うが……。
それでも2階層でこんなモンスターが現れるなんて、誰が思うだろうか。
この異変と大量の探索者侵入で死者が出ていなければいいのだが……。
「くる……。他の探索者は下がって!」
ゴブリンチャンピオンは陽葵さんの姿を見つけるや否や、両手を広げ突進してきた。
他の探索者は慌ててその場から退避。
熾烈な戦いが幕を開ける。
そんな予感が辺りの空気に漂よう。
「ぐ、あ……」
「両手が、大きくですって」
ゴブリンチャンピオンの両手、両腕が陽葵さんを捕まえるためか、巨大化。
これがこのモンスターのユニークスキル。
小回りを生かして戦う陽葵さんからすれば、避ける場所、戦う場所を狭められるこのスキルは相性が悪い。
ここは俺が超身体強化で1度その攻撃を受け――
「あ、が……。ぷはっ! できたわよ! 私の濃い魔力を費やした剣が!」
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