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57話 手練れ

「――えっとこれで申請も終わって、探索から戻ってきた時にはハチさん用の探索者証が出来上がってるはずです。それまではこちらの仮探索者証をお使いください。ランクの記載がないので、ランク相当の商業サービス、素材の査定は不可能ですが、証明書としての機能はありますので何かあったらこちらを提示すれば大丈夫で――」

「だから今日は程々で切り上げて、身の回りを……」

「いーや、丸1日ダンジョンに籠るわよ。陽葵はレベルがまだ100になっていないのだから、もっと狩りに積極的にならないと駄目だと思うわよ」

「もっと狩りに積極的にって……まさかそんなことを言われる日が来るなんて思わなかったわ。最近はボランティア活動ばかりだったけれど、前までは探索者の中でもダンジョンに籠っていた方で――」

「でも、遥様はもっと籠っていたんじゃないかしら?何でもスキルの覚醒前にはレベル100に到達していたらしいじゃない」

「それは……」

「よし、言い勝った! 今日はダンジョンに籠るから食料の買い貯め頼んだわよ!」

「な、なんで私が奢るみたいな流れができてるのよ!」

「あ、あのー」

「それ、一旦俺が受け取っておきますよ」

「はい。その、大変だと思いますけど、探索頑張ってください」


 未だに仲良く喧嘩ごっこする2人に戸惑う京極さんから俺はハチの探索者証を預かった。


 ダンジョン街には探索者だけが利用できる施設、主に武器屋等があるため、その利用にこれが使われることがしばしばある。


 ハチはがさつなところもあるからしばらくは失くさないように俺が管理しておこう。


「行こう2人とも。あまりここで騒いでいると回りの目が……」


 複数ある内の1番隅、隣の窓口とは離れたところにあるこの窓口だが、ハチと陽葵さんが騒がしくしているせいで、他の探索者がほぼ全員俺たちに目を目向けている。


 そうでなくても、ちらちら見られているというのに……。これじゃあ動物園の檻の中じゃないか。


「あははははっ! 有名人たちは派手に振る舞うのが好きなようだね。でもそろそろ僕も時間が迫ってきていてね。早めにお願いできるかな?」

「す、すみません。ほら2人とも早く」

「あっ、ごめんなさい」

「……」


 いつの間にか後ろで待っていた男性に順番を譲ると、俺たちは急いで外に向かった。


 京極さんが主なあの窓口に、俺たちの後で待っていたということはきっとあの人もランク10。


 身に付けているもの、振る舞い、絵に描いたような金持ち、という印象だった。

 あまり強そうには見えなかったが、その実どうなのだろうか……。


「あの人かなりの手練れだったわね。近づいてきたことに全く気付かなかったわ」

「ええ。それにあの気配。きっとモンスターと契約をしているランク10の探索者。普通に戦えば勝てる実力だとは思うけど……。手の内が分からない状態で、下手に怒らせて戦闘……。なんてことになったら痛い目をみていたかもしれないわ。不気味な顔も気になったし、早くここを出ましょう」

「賛成。食料は私が買うからさっさとダンジョンへ向かいましょう」


 さっきまで言い合いをしていた2人は顔を見合わせると、俺よりも早く探索者協会の出入り口を跨いだのだった。

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