55話 伝達済み
「契約者を2人に変更。主が2人。その内の優先順位を確定。私のユニークスキルを両者に共有。2人目の主とは仮契約とし、自身の負担を軽減。契約期間なし、っと」
「ほう。複数人と契約できるモンスターもいるのですね。これは興味深い」
ハチは呟く会長に対して満足気な表情を見せると、竜に陽葵さんを解放させた。
当の陽葵さんは唐突な出来事に驚きを隠せないのか、顔を赤くしたまま黙り込んでしまった。
俺としては陽葵さんが死んでしまう可能性を極力潰せるのであれば、契約は賛成だが、あまりに一方的で、説明もないのは良くないと思う。
「そもそも私は8匹でオロチだから、共存とかそういったものも得意なの。多分階層を与えられたモンスターの中でも珍しいんじゃないかしら。ま、その分リスクはあるけどね」
「リスクとは?」
「燃費が悪くなる。つまり、魔力が減りやすくなるのよ。元が微量とはいえ、それでも魔力を2倍消費していくわけだから、体に負担もかかる。とりわけ空腹までが早くなるのはしんどいのよ。これが魔素が濃い深い階層なら、全く苦にならないんだけど……。この階層じゃあねぇ……」
「お腹……。あはは、リンドヴルムとは違ってその辺りもユーモアがありますね。ハチさん、オロチというモンスターは」
会長はそんなハチを見て顔を緩めた。
怯えて姿を出さないリンドヴルムというモンスターは、ハチとは対極の性格だということがよく読み取れる。
「それじゃあここでの用も済んだことだし……。あなた、探索者の申請お願いできるかしら?」
「はい。それと今後探索者協会にて何か用事がある場合、皆さんを私が担当します。他のランク10の方々も私が担当を務めていますから、安心してください」
「他のランク10も……。それって、もしかしてその人たちにも?」
「ええ。会長と私のことはお話済みです」
伝達している、のか……。
いくら厳選した探索者とはいえ、これは悪手ではないか?
そもそもそれを伝えるメリットがあるとは思えないのだが……。
「それ大丈夫なの? いくら信用してるからって……」
俺が質問したいことをハチが投げ掛けてくれた。
元気で明るい口調をしているが、案外俺と同じくらい、場合によっては俺以上な考えていたりするんだよな、ハチのやつ。
「大丈夫です。というのも、ランク10の方々にはモンスターとの契約実験をするために何匹かモンスターを飼ってもらっていましてですね。会長と私のことをバラした場合には、そのことも報道してもらうつもりなんです」
「無理矢理弱みを作ってやったわけね……。って、契約実験?」
「はい。それについての説明は後日、ランク10の探索者さんの誰かがお手隙になったタイミングでしたいと思いますが……先に少しだけお話させていただくとですね。ランク10の何人かは既にモンスターとの契約に成功しています」
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