49話 風の悪戯
「……使用者はここにいませんか。なんにしても魔法の気配は感じなくなりましたし、早く中へ――」
「神話級魔法を使う人間……。てっきりいないものだと思っていたけど……」
「……。なるほど、ハチさんは神話級魔法をご存じなんですね」
「え? あの、そうですね。戦闘中は使っていませんでしたけど、オロチも神話級魔法を使えましたから。ほら、遥様もオロチが神話級魔法を使っているところ見たでしょ?」
「あ、ああ。そういえばそうだったな」
「そうだったのね。良かった、あの時使用されなくて……」
会長の思わぬ魔法の発動にボロが出そうになるハチ。
案外演技とか、作り話とか、その場を乗り切るための機転は利くから、陽葵さんたちは特に違和感は感じていないようだ。
ただ会長は相変わらずの表情で怪しさ満点ではあるが。
それにしても俺たちを監視する魔法が使われていたなんて……。
家に押し掛けてきたあいつらの仲間か?
それともまた別の……。あの時感じた視線と同じ相手か?
「そうだったのですね。まぁその話も中で聞かせてください。そうですね……もたもたしていると、また誰かが魔法を行使するかもしれませんし……。少し荒っぽいですが、初級魔法『風吹』」
足元に吹く強い風が俺たちの身体を浮かせ、勝手に探索者協会へと運ばれる。
初級魔法にしては、これも効果が高い。
これは魔法に関する会長のステータスが高いことを表しているが……。
それにしても、レベルの上限が100のままにしては会長の強さはおかしい気もす――
「きゃ、きゃああああ!」
「ちょ、遥君!こっち見ちゃ駄目だから!今日は戦うことないって思って……こんなことならスパッツ履いてくれば……」
「え?」
「お、おい、見るならもっとバレないようにしろって!」
風によって運ばれることで、京極さんのロングスカートと、陽葵さんのテニスウェアに似たスカートが何度も捲れ上がる。
陽葵さんはいつも中に見えても大丈夫なようにスパッツを履いているが、それはなく、赤い紐の下着が。
京極さんは水色のTバックか。意外だな。
「2人ともそんなヒラヒラしたのを押さえてどうしたの? その派手なのを見られるのがそんなにまずいの?」
「ハチさん。一緒に暮らす仲だからそのあたりもしっかり教えてあげる。それと……そっち、男2人はあとで覚えておきなさいね」
俺とリーダーに向けられた冷ややかな視線。
会長……余計なことをしてくれたな。
「あはははは。愉快な人たちですね。お、それじゃああの窓から、私の部屋に入りますね。今日の予定は全て私の部屋で、私が行いますか――」
「もとはと言えばあなた、会長がこんな魔法を使ったのが問題ですよね? 私は会長といえど容赦しませんから」
「……。はは。すみません」
俺たち男性陣は気を落としながら、女性陣の殆どは顔を真っ赤にしながら、最悪な雰囲気で探索者協会へと移動を完了させたのだった。
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