46話 ランク10
「全員伏せろっ!」
慌ててその場にいたマスコミ陣に指示を出すが、俺自身は背後の自宅に魔法が当たってはまずいと、その攻撃を避けずに敢えて受けた。
ハチとは違って俺がよく知っている威力の魔法。
レベル4000となった、今の俺の場合ダメージはほぼなく、痛いというよりも振動で痒いと感じるあの感覚に近い。
とはいえ攻撃されたのは事実。
一体どうして……。
「ちっ。涼しい顔しやがって……。おいお前らもう一発――」
「もう一発、か。もしかしてお前ら、今の魔法が当たりどころが悪かったから効いていないとか言うんじゃないだろうな?」
「……そうに決まってるだろっ!レベル4000だとか、最上級魔法だとか、ついこの前まで伸び代のない雑魚だったお前が、お前だけが……そんな都合のいいことがあっていいわけがない。映像も証言も全部偽物に違いないんだよ。このランクに目が眩んだペテン師が。今俺たちがその化けの皮をひん剥いてやる」
「嫉妬……。お前らは慎二と同じレベル、いや、卑屈さだけで見るならそれ以下だな。そんなことしている暇があるならせっせとレベルを上げろ。前までの俺と違って、お前らにはまだ成長の余地があるだろ?」
「うるさい。うるさいうるさいうるさいうるさい!偽装でランク4になれた奴が偉そうな口を利くな!『水弾』」
俺の話に聞き耳を持たず、2撃目が放たれた。
ここは俺も魔法で――
「ダンジョン街での人に対する悪意のあるスキルの行使、又攻撃魔法の行使は最悪の場合更正施設行き。それが防衛のためでも怪我人を出せば一発アウトよ」
「陽葵さん……」
俺がやり返そうとすると、俺の正面に陽葵さんが現れ、その剣で魔法を切り捨てた。
通常魔法は同じ等級の魔法をぶつけることでしかかき消せないはずだが、陽葵さんはユニークスキルを使うことで剣でもそれを可能にする。ただかき消すことのできる魔法は威力次第らしいが、通常の最上級くらいなら何とかなるらしい。
「あなたたち、これ以上ことを荒立てるなら探索者協会への報告は勿論、ランク10の探索者権限で協会保有の物件に住めないようにしてあげてもいいのよ」
「……ちっ」
陽葵さんの脅しが利いたのか、探索者たちはそそくさとその場を去っていった。
レベル4000、それに急なランクアップ。
オロチ討伐だけでは、まだ信じられない人間も多いようだ。
何か自分の強さを誇示できるような機会があればいいのだが……。
「あ、あの!流石ランク10の橘さんですね!少し質問よろしいでしょうか?なぜ今日は並木さんの家に? もしかしてお2人はお付き合いされているのでしょうか?であれば昨夜は一夜を共にされて……いやぁまだまだお若いようですね」
「あなたたちも勝手に押し掛けてくるのはマナーとしていかがなものなのでしょうか?知ってますか? ランク10になると、個人を指名して更正施設へ連れて行くよう、探索者協会へ進言出来るんですよ。それもほとんどの場合つつがなく受理されるとか」
陽葵さんはいつもの怖い笑顔で睨むと、マスコミ陣を黙らせただけでなく、1人残らず徹底的させてしまった。
これがランク10……。
俺ももっと言動に気を付けないとだな……。
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