45話 マスコミ
急いでランク上げをしよう。
そう話したその日俺はランクアップをしてしまった。
ランク4であれば、利用できる施設も増え、モンスターの素材を今よりも少し高く、何よりクエストを依頼される可能性も出てくる。
嫌でも収入が増え、居住区も移れるが……取りあえずハチのランクが同程度になるまではまだここに住まわないといけない。
いや、それ以前にハチは探索者になれるかどうかという段階なのだが……。
「――まぁ単純な戦闘力だけなら十分その資格はある。あとは探索者として働く意欲があるかどうかだが……。この様子だとどうしても心配だな」
「はい。でも日にちって変更出来たりしないんですかね?」
「探索者協会としては、メディアや世間の目もあるから早めにハチさんの資格調査をしておきたいでしょうし、あんまり日にちを空けてしまうといらない憶測がネット上で広まる可能性も。既にハチさんという存在をこれはモンスターが人間を内部から殺戮するための罠、と主張する人がちらほら出てきているらしいですよ」
「昨日の今日だっていうのに……。ネットって凄いですね」
「はい。ハチさんだけじゃなく、並木さんもかなり注目されてますから、外ではできる限り注意をしないとですね」
結局誰1人帰ることがなかったタフネスな祝勝会の翌日。
昨晩早くもオロチ討伐のニュースが世間に流れたことで、色んなメディアはそれに関することばかりで汚染されていた。
しかも、朝から探索者協会から本日中という旨で召集を受け、だるくなった身体で出掛ける羽目に。
そして肝心のハチはというと、頭を抑え、頻繁に嗚咽を漏らしている。
こんなので、本当に資格を得ることができるのだろうか?
「ねぇ遥君、あれってもしかして……。注意していても今日だけはどうにもならないかもしれないわね」
「……。レベル100の時もマスコミは集まったが……その時の比じゃないな」
完全な2日酔いに苦しむハチを眺めていると、陽葵さんがさっとカーテンを開けた。
すると外には人だかり。
いくら無法地帯と言われる居住区でも、ここまでモラルなく、人の家の周りに集まられるとは思ってもみなかった。
それに人混みの中にはマスコミだけじゃなく、何かが気に食わないのか、険しい表情の人たちがこちらに熱い視線を送っている。
こんな騒ぎになったからか、近所の人たちがクレームを入れにきたのかもしれない。
「これじゃあ職場に行きたくても行けないですよ」
「……。仕方ない。ここは年長者の俺が出て――」
「いえ、俺が出ます。そもそもここは俺の家。家主としてマスコミには文句の1つや2つ言ってやらないと」
リーダーが出て行くのを止め、代わりに俺が玄関のドアを開けた。
すると矢継ぎ早に繰り出される質問、カメラのフラッシュ、向けられる多数のマイクが俺を襲う。
「あ、あの、ちゃんと答えますから順番に――」
「『水弾』 」
「『風挟』」
「『黒雷』」
マスコミからの質問に答えようとした瞬間、俺の耳には質問とは別に初級や中級の魔法名が聞こえてきた。
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