44話 祝勝会
「――すまないな。まさかこんな風に招かれるなんて思わなかったぞ。ただその分しこたま買い物は済ませておいたから……って早速1人出来上がってるな」
「いや、それが飲み会まで時間がかかりそうだったので、ちょっとだけ食事をしようってなって……。こんなことなら飲ませないほうが良かった――」
「お邪魔します」
「京極さん……。すみません。まだお仕事もあったでしょう?」
「いえ、今回は危険な現場での仕事をこなしてくれた、ということであとは上司たちが色々してくれるそうです。動画も早ければ明日……もしかしたら今日の深夜帯には公になるかもしれません」
自宅に着くその道中、軽い祝勝会をしようという陽葵さんの提案を受け、3人だけで酒を開けると、ストレスからか、それとも酒に目が眩んだのか、あっという間にハチはへべれけ。
外に出すのも難しい状態になってしまったため、リーダーに連絡すると、主役不在じゃ意味がないということでこうしてわざわざ俺の家まで来てくれたというわけだ。
流石に人の家に大勢で向かうのも悪いと思ったのか、参加希望者は殆んどいなかったそうだが、京極さんだけは乗り気で、報告が済めば参加できるかもしれない、と頻りにその経過をリーダーに連絡していたらしい。
結局俺、陽葵さん、ハチ、京極さん、リーダーの少人数での飲み会になったが……大勢で、というのはあまり得意ではないから少しほっとしたような気持ちもある。
「とにかく、だ。オロチ討伐本当にお疲れ、そんでありがとう!きっと今まででオロチの被害にあった人たち全員が感謝しているはずだ。因みに俺も住まいを壊されて……。激レアフィギュアを……。いや、そんな話はやめよう」
オロチの被害……。
殺しはしていないが、それでもハチは大罪モンスター。
そして俺はそのことを黙っている。
この言葉はどうしても耳が痛くなるな。
「さ、全員酒は持ったな。では……乾杯!」
全員に缶ビールが行き渡り一口。
なんだかんだ長い時間ダンジョンにいて、疲労も溜まっていた。
そんな状態で飲むビールは余計に身体へ染み渡る。
「さ、それとここで全員に嬉しいニュースだ。京極さん、あんたが上にお願いしたお陰だ。あんたの口から報告してくれ」
「は、はい」
「嬉しいニュース?」
「何かしら?もしかして探索者協会から褒賞金でも――」
「それも別日に貰えるみたいなんですけど……。それ以上に嬉しい知らせだと思います」
京極さんは勿体ぶるように一呼吸。
そして背筋を伸ばして、場に緊張の空気を生み出すと、再びその口を開いた。
「原文のままお伝えします。えー、本日をもって橘陽葵のランクを10、並木遥のランクを4、そして此度ダンジョンより連れてきたハチという女性は特例として資格調査後探索者となるための申請を可能とする。だ、そうです。オロチ討伐とランクアップ、両方を祝って今日はのみ明かしましょう!」
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