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41話 もっと強いやつ

「遥様! ボケッとしてると本当に危ないかもよ!」

「やっぱり、遥様呼び――」

「『火炎沼地獄(ヴォルカニックマーシュ)』」


 俺はじっと見つめてくる陽葵さんがこれ以上何か言い出す前に最上級魔法をダークウルフに向けて放った。


 地面に展開された魔法陣は自分が想像していたよりも、範囲が広く、術式のようなものが複雑に描かれていた。


 そんな魔法陣は、2度赤く点滅後、辺りに勢いよく炎を走らせると、その範囲内の地面をマグマに変え始めた。

 一見ただマグマを産み出す魔法に見えるが、それは違う。

 マグマはまるで底なし沼のように、ダークウルフたちを徐々に飲み込み、暴れればそれは加速していく。


「もがけばもがくほど抜け出せなくなる炎の沼。俺が知ってるこの魔法は広範囲で外れることはないが、即死力にかけるのが難点――」

「遥君、あれって……。ハチさんの水弾(アクアバレット)もそうだったけど……あなたたちの使う魔法、等級間違ってない?」


 マグマから伸びた不気味な腕。

 それは複数、至る所から伸び、ダークウルフの頭を掴んで、マグマに顔を埋めさせる。

 強制的にその身を焼き上げる仕様なのだろうが、手が持つ熱とその握力で、実はダークウルフの顔面は既にグロッキー。

 この程度のモンスターではその力を存分に発揮させることができなかったようだ。


 因みに手は一応俺の念じた通りに動いてはくれるものの、その物々しさは拭いきれない。


 威力も不気味さも強力。

 だけどハチの話に出てきた魔法の祖、それと比べれば子供の遊び程度なのかもしれない。


「レベル4000、か。あながち冗談じゃないのかも……」

「まだ疑ってるんですか?」

「だって、普通は上限100レベルなのに……その40倍なんて飛躍しすぎよ」

「じゃあステータスを――」


 依然疑心を残したままの陽葵さんに、この際ステータスを見てもらおうとした。

 しかし、その瞬間ダンジョン全体に少しだけ揺れを感じ、俺は身体を強張らせた。


 この揺れは……またハチか?


『ハチ。もうモンスターたちは倒してあるから、余計なことは――』

『私じゃない。これは多分……。でも、まだ起きた訳じゃないみたい。これなら、少し寝返りでも打った程度。きっと今の炎魔法にちょっと反応しちゃったのね。あいつかなり敏感だから。ま、心配しないでも大丈夫よ』

『それはつまり……どういうことだ?』

『私は戦ってギリギリ特別になった。ということは、もっと楽勝に特別になったやつもいるわけで……。ダンジョンって遥様が思っているよりももっともっと深いの』

「……オロチより強いやつが、いる?」


 ついつい念話ではなく声に出して呟くと、陽葵さんだけでなく討伐隊の人たちも、信じられないと言ったような表情で俺に視線を向けてきた。


「そんことより、モンスターの素材があっ! 何してくれてるのよ遥様! あ、でも私そもそも剥ぎ取り知識が……。そっちの、人間の女、私に剥ぎ取り方を教えて頂戴!」

「え、ちょっと今はそんなことより……。遥くぅん……」

「あ、あはは」

「……。あはははははははははは! そうだな。折角のめでたい日だ。今後の不安なんか忘れるか! それで今日は俺の奢りで宴会だ! ……。ただ……並木遥。お前さんの連絡先だけ先に聞いておいてもいいか? これからも討伐隊を頼むな」


 余計な一言で余計な関係が生まれてしまった。


 まぁ、望んでいたのとは大分違う形ではあるものの、陽葵さんと肩を並べて戦うための大義名分は得られたかもしれないな。

お読みいただきありがとうございます。

モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。

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