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405話【陽葵視点】蝶

楽しそうな声をあげる赤と、自分の身に起こった変化に戸惑いながらも、その瞳を輝かせる探索者の仲間たち。


 反対に矢沢は攻撃を完全に防がれたことと、仲間の変化で口が塞がらないみたい。



「――ば……馬鹿馬鹿しい!新たな装備を賜った程度で大した戦力ではないはずだ!そもそもその装備は火の粉から生まれたもの、性能が高いとは到底思えない!遅く……範囲が絞られる息よりも低火力ながら広範囲の魔法を用いるべきだったか。……神話級魔法『蝶風演舞(バタフライサイクロン)』」



 矢沢が手を高くかざすと、巨大な魔法陣が頭上に浮かび上がった。


 するとそこからパラパラと白い粉が舞い落ち、まるで雪のようにキラキラと光輝いた。



 綺麗、だけど神話級魔法だって言うならそれなりの火力……殺傷能力があるはず。


 最悪の場合、これが毒だって可能性も……。



「皆!! 口を布か何かで押さえて!! 絶対吸い込んじゃ駄目!!」



 私の指示に従って仲間たちは一斉に口を塞ぐ。


 でも矢沢は困った様子を見せることはなくて、それどころかより多くの粉を降らせる。



「一体どんな仕掛け……。……そうだ、今の私ならあれをもう少し本物に近い再現で……」



 ――バサッ。



「え?」



 魔法の効果がどういったものなのか、それを読み取るためにスキルを発動させようとした時、背中から再びはためき音が聞こえた。


でも翼をは動かした感覚はない。



「まさか……」



 急いで後を振り返りながら、両手で背中を触る。


 すると小さい羽が数枚生えていることに気付き、私はそれを慌ててむしろうとした。


 だけどガムを踏んでしまった時のように粘りがあって中々離れてはくれない。


 これがどういった効果を生むのかは分からないけど、このままじゃまずいのは確か。



 だってこれ、時間が経つにつれて魔力が膨れ上がっていくのが分かるもの――



「――回れ」



 冷や汗が流れるのを感じつつ、どう対応しようか思考を巡らせようとしていると、こちらが打ってでるよりも先に矢沢はその指をくるりと回して呟いた。


 途端、羽音は強くなって私の身体を中心にして2種類の渦を展開。


 上下で左右反対の回転をするそれは、凄まじい風を起こしながら私の身体をも上と下、別々に回転させようとする。


 そして抵抗すればするほど羽音は強くなり、風とうねりがそれに合わせて回る、回る回る。



「身体を、引きちぎろうとしているってわけね。でも、これくらいなら……」



 神話級魔法といっても、大して痛みはないみたいだったから私はすっと力を抜いて攻撃が静まるまで待つことにした。


 冷静に判断出来るだけじゃなくて、なんだか防御力も格段に上がっているらしい。


 これなら皆もなんとか耐えられ――



「たああああああああっ!」

「すげえ、すげえよこれ!!」



 辺りを見渡すと、いくつも伸びている複数の風の渦には炎が混じり、その中から仲間の探索者と焦げた羽……その正体だった蝶が次々と飛び出すのだった。

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