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404話【陽葵視点】強くなれる

強くなれる。

 その言葉を自分でも噛み締めながら再び矢沢を見る。


 力に溺れた強さじゃなくて、本当の意味で私は強く、強く……。


 皆の視線だけじゃなくて、遥君からもずっと熱い視線を送ってもらえるようなそんな存在でありたい。



「そのために私は……矢沢、あなたを通過点にさせてもらうわ」

「通過点……それはそれは随分と嘗められたものだな。その喉はかっ捌いてあげたほうがよさそうだ。今度は手加減しない……『風竜の滅息』」



 矢沢が口を開くとさっきと同じ様に光線が打ち出された。


 ただその色も音も衝撃波も纏わりつく風の勢いもまるで違う。


 黒く、禍々しく、地面を抉って進んでくるそれは風の勢いを利用して広範囲に枝分かれしようと先端に切れ込みが入っていくのが見えた。


 私はそれをそれを阻止すべく一歩前進。



「……違う。何か、いつもとは……」



 すると自分の身に以前とは違う感覚が宿っていることに気付いた。


 足裏にバネがついているんじゃないかと思うくらいの推進力、何かで覆われ、敵から発せられる風が遮断され守られているような感覚……。



 それは段々と増し、遂にはかしゃんと音が鳴り始めた。


 重い音、だけど炎と同じ様に空気のように軽い。



 そうした異変を帯びたまま手を伸ばすと、いつの間にかその手には赤い籠手が装着されていて、簡単に風をかき分ける。


 対象は風なのに、物体として扱える……。



「じゃあ、こんなことだって」



 私はかき分けた先にあった光線、枝分かれしようとしていたその先端を掴んだ。


 そうすることでまるで蛇口に繋げたホースみたいに光線は膨れ上がって、その場で完全に止まった。



 そしてそれを飲み込むみたいに炎が光線を伝って矢沢の元へ走っていく。



「――くっ! まさか、こちらの攻撃を利用するとは! ……せめて、弾けろ!」



 私から発せられた炎が自分の身体を焼いてしまう、そう矢沢は恐れたみたいで、即座に光線を吐き出すことを止めた。


 しかし、私が掴んでいたそれが残っていたのを見ると矢沢は両手をぱんっ、と合わせて弾き飛ばせる。


 私は慌ててそれを燃やし尽くそうと力を込める。


 けど、それは燃えきる前に辺りに降り注いでしまう。



「まずい――」



 また私の炎が皆を燃やし尽くしてしまう。


 そう思って慌てて皆に視線を映した。


 でも、そこに映っていたのは熱さに悶え苦しむ仲間たちじゃなくて、さっきまでボロボロだった装いを新しく、しかも赤くきらびやかな武装に変え、自信に満ちた表情を浮かべる仲間たちだった。



「まさか……炎が、赤と私の力が伝播したって言うの?」

『力もだけど、まさかこっちの趣味も全開になるなんて……最高じゃん、これ』

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