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403話【陽葵視点】背中

「――あ、れ?俺……どうして? 死んだはずじゃ?」

「私も……首が繋がってる」

「それだけじゃない。魔力が満ちて……いつもより身体が軽いくらいだ」



 あっという間に皆は意識を取り戻して、不思議そうに自分の身体を見た。



 この戦いで死ぬことを覚悟してはいたけど、やっぱりいざその命が助かったとなると、嬉しさや安堵が押さえきれないのかその瞳からは涙が零れ始める。



 私も自分の身体が焼けてなくなる可能性が0になって、余計に気持ちが落ち着いた。



「驚いた……。だが、こちらも回復の時間は稼げそうだ。つまり戦況はリセット、というわけかな」



 そうこうしている間、私は攻撃を一時中断。


 矢沢は後方へ飛んで逃げていくと、回復に専念。

 こちらが与えたダメージを瞬く間に回復させていく。



「――あのまま火力を上げていればもしかして相討ちに出来ていたかもしれない。……皆の決死の覚悟を無駄にしてしまって、ごめんなさい」



 そんな矢沢を確認し、しばらくは攻撃が来ないと判断すると、私は仲間に視線を向けて頭を下げた。


 命を繋げたのは間違いないけど、その心意気は殺してしまったから。


 身勝手に暴れておいて、その上結果を出せなかった。


 冷静さを取り戻すことで自分のしでかしたことが重くのし掛かり、私は自然と謝罪をしていたのだが……。



「『ヒール』」

「『伝魂気』」



「これ……」



 頭上には幾重にも魔法陣が重なり、それから放たれる光によって身体が癒されていく。


 それに前衛の仲間たちが武器を私に掲げると、さっきまでとは違う感覚で気持ちが熱せられていく。


 漲る……けれど、とっても穏やかになれる。



「謝罪なんて要りません。むしろ俺たちは感謝していて……。役立たずなことを謝罪したいくらいです」

「私たちが戦闘面で矢沢に一矢報いるのは不可能って、悔しいけど痛いほど分かりました。だから、今度こそ『リーダー』が一撃を決められるように……命を投げ出すんじゃなくて、預けさせてください」



 絶え間なく送られる謝罪と願い。


『リーダー』なんて言葉まで使われて……剣道場で皆を引っ張って、お手本になろうとしていた時を思い出す。



 あの時は失敗した。

 遥君の道を示して上げることができなかった。


 止めるどころか、悪化までさせて……。

 命を削るような状態にさせて……。



「……。今度はそうさせない。寄り添って、強く優しく道を示す。……。お母さんはきっとそれを目指して、だからあれだけ慕われることができた。私たちを置いて死んじゃったことは許せないけど……その意思を組み上げて、私は越えていくの」



 ――すぅ。



 大きく息を吸う。


 肺が痛いと思うくらいに、全力で声を張り上げられるように。



「――皆! 今度は絶対に死なせない! だから安心してついてきなさい! 私の背中から目を背けないで!そうすれば、あなたたちもきっと強くなれるから」

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