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402話【陽葵視点】優しく

「ちっ……。くどい!」

「や、やめ――」



 矢沢は近づく探索者仲間たちに視線を移すと口を大きく開けた。


 そうして吐き出されるのは細くて長い光線。


 その周りを風が漂うことで敵をその場から動けにくくし、一方的に攻撃は当たっていく。


 範囲はそこまで高くないし、威力も高くはない。


 でも光線は1度触れただけで消えるものじゃない。

 だから持続して肌は傷つけられて、肉を切り裂いていく。



 前衛の皆は防御力を高める術を持っていたり、筋力が高いからなのか前進を止めることはない。


 ただ後衛の皆は……。



「ひ、ヒール――」



 ――ぷしっ。



 首が落ちた。

 しかも最後の一言は私を助けようとする魔法の名前……。


 さっき動けなくなった探索者よりもグロテスクに散って、吹き出したその血は風に乗って私の元まで運ばれる。


 血まみれになった仲間を見て、他の探索者は一瞬たじろいだけど、足を、魔法の発動を止めない。


 そんな仲間たちを……私の炎は勝手に襲う。


 それでも仲間たちには恨むような瞳が宿らない。



 信じる、ついてくる。


 お母さんを越えようとしたのに、下回った私に。



 それじゃ駄目。そんな私じゃ駄目。

 お母さんみたいに皆に讃えられたいからじゃない、お母さんみたいにこの人と戦って良かったって思える人間……それにさえまるで届かない。



 そうだ。

 だから私は、あの子の……遥君の見本になるために変わったんだ。


 その結果凄く後悔することもあったし、今だって後悔の波は絶えない、けど……。


 まだ……この力があれば、私がそこからもう一度変われるのであれば、後悔は減らせるかもしれない。



 ――すぅ。



 燃え上がる心と、泣きそうになる身体、その2つを落ち着かせるために炎ごと一気に空気を吸い込んだ。


 すると不思議なくらい意識がまとまって、深海にみたいに辺りが静かに感じ始めた。



「心頭滅却すれば火もまた涼し……ってこういうことを言うのかしら?」



 そんないつにも増して高速で回転する思考の中、私はある光景を思い出していた。


 赤が収容所の人たちに力を貸して、その力によって再生を果たす姿。


 あの時は悪意を持って貸し与えていた力だけど……優しく、仲間たちを私が背負ってやるんだって、その心を持って貸し与えれば……。



 ――ふぅ。



「あっ……。え?」



 さっき吸い込んでお腹に残っていた炎を辺りにそっと吹きかけた。


 そうするとそれを被った子たちからだんだんに傷が塞がって、頭と首が繋がりもしていく。



「――なっ!? なぜだ! 奴らは死んだはず!」

「いいえ、心が燃えている限り死なない。そして……それは私も同じ」

「……。こ、焦げていた腕が元に戻って……なんだ、なんなんだその回復力は!!」



『く、ふふ……。ははは!流石主様だ!竜の力を、私ですら引き出せていなかったそれを、どうやら起こしてしまったらしい』

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