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399話【陽葵視点】竜人

「雑魚が、まだ立ち上がるか」

「今だ!! 橘さんが隙を作ってくれた!! 今のうちに!!」



 仲間の探索者たちは私が攻撃を繰り出し、走馬灯のように過去の自分を思い浮かべている間に多少回復できたのか私たちを両側から囲み攻撃の姿勢を見せた。


 後衛で魔法を行使していた仲間もいつの間にか近寄り、小型の武器を取り出している。



「――駄目、私はずっと1人で……モンスターを殺して、殺したい。それに……お母さんみたいに、弱い人のために犠牲になることも……。私は、私はお母さんとは違う強い、強くなりたい身勝手な化物……だからっ!!」



 心が身体が加熱して、炎がより強く多く吹き出す。


 それは周りにいた仲間たちすら燃やし尽くそうとする勢いに発展。


 もう、私にも止められない。

 頭は動いているのに……。



「これでも飲まれていないと?過大評価、過度の擁護、甘やかし過ぎも人を駄目にすると思うぞ」

『……ふふ』



 ついに赤も矢沢の言葉に苦笑するだけになった。


 でも私は、私の顔は勝手に笑顔になっていく。


 天才と呼ばれてA級に上がったわけ、それは苺ちゃん以上に戦闘に狂うことができたから。

 レベル上げに暮れて、限界を悟ってもなお戦いに行く遥君を止めようとしたのは、心配だっただけじゃなかったのかもしれない。


 私は昔の私みたいになる後輩が怖く思えたのかな?


 だから、いつの間にかお父さんみたいに丸くなって、まともぶって……。



 私は……私は……。



「――こうなれば仕方ない。最早人の身を捨てよう。今はこの場を……この危険分子たちを殺してしまうことが最優先。それに……戻ることもいずれは叶う。地上にはあらゆる知識、資源が集まり、それを私たちだけが自由に扱える……そんな時代はもうまもなく始まるのだから」

『へぇ……。そこまで風竜を飼い殺した、と……』



 赤の感嘆に近い声と共に矢沢の身体に更なる変化が現れる。


 髪は皮膚と同化して鶏冠のように後方へ纏まって逆立ち、口は伸びて肌の質感はは虫類のそれへと変わる。


 身体は細くて人型のままだけど、これを見て普通の人だって言う人はもういないと思う。


 亜人……違う、苺ちゃんや京極さんとはかけ離れすぎている。



 これは……竜人(リザードマン)って、呼ぶのがきっと正しい。



「この姿であれば小細工はいらない。ただ無我夢中に拳を振るうだけで十分。年齢、種族、体型……全てのビハインドはこれで完全に消えたわけだからな。それに……」



 ――ヒュン。



「壁は勝手に作られるようだ」



 矢沢が腕を強めに振っただけで私の身体は少し押され、距離をとられてしまった。


 そして、仲間の探索者たちはその熱気とは反対に一歩を踏み出すことができないでいた。

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