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393話【陽葵視点】あはは

 自分らしくない発言。

 周りから固めようとするズル賢さが相まって、恥ずかしすぎるお願いになった一言。


 いつもなら失言だって顔が熱くなるところだけど、今は余計に燃えてしまう。


 気力を膨らませるために拡張されたのは、気持ちの受け皿。


 それはメリットとして利用もできるけど、やっぱりスキルとして大きなデメリットも背負ってる。



 ここに遥君がいなくて本当に良かった……。


 もし居たのなら、居てくれたのなら、私……我慢できなくなってたかもしれない。



「そう、今みたいにっ!!」



 辺りには仲間の魔法による炸裂音が鳴り響き始め、爆風が巻き起こったり、巨大な氷柱が落ちたりと危険な状況が生まれる。


 そんな中私はそれに突っ込み、最大限翼を広げて羽ばたかせる。


 そうすることで風や衝撃を巻き込んで、私はもっと速く前に進んでいけるはず。



 多少の切り傷や火傷はアクセントとして、味わおうじゃない。



「あははははははは!!」

「まったく……これではどっちが敵だか分からないな。君たちもあまりここに留まらないほうが身のためだ。……さて、そろそろ私もより大きな力の譲渡が完了だ。やれやれ、どれもこれもこの老体には大きすぎる負担だな。だが、いつまでも生身で受け止めているよりかはいいか」



 矢沢の周りに風が吹く。


 それは強い圧迫感をここにいるほとんどの人間に与えて、次第に物理的な圧力をかけていく。


 慎二の使っていた魔法に似てるけど、それよりも範囲は広めで殺傷力も高そうね。



「くっ、あっ!!」

「……だから言ったでしょう、ここに留まらないほうがいいと」



 おそらく押し付けられた風は最大出力になった。


 前衛で踏ん張る探索者の皆は押し潰されるギリギリのところで耐えているけど……このままじゃ死んでしまいかねない。



「は、はは……。馬鹿が、それはお前も同じだ……矢沢」

「……雑魚が噛みつきますか。くっ……だがこれでは――」



 それでも仲間の1人が必死に矢沢に抱きつき、2人3人とそれは増えていく。


 そうして身動きがとれなくなる矢沢は、逆にそれが盾になったと思ったのか広角を上げた。



 でも……。




 ――ドスン、ポタ……。




「ば、かな……。あなたは、あなたたちは、命が惜しくはないのか?」

「そ、そりゃあ、な……。でもな、我慢しろってそういうこと、なわけで……。それにここで、こうして散れるなら……悔い、はないっ!」



 普通であれば仲間を助けるのが最優先で、矢沢の変化と攻撃に動揺して躊躇うところ。


 だけど、死んでしまいかねない……つまりまだ生きて、動ける状態であればそれは不要。


 むしろここでやりきらなければ失礼だって思うくらい。



 だから私は勢いを殺さず突いた。

 爆発する感情、殺したいという欲望に忠実に従って。



「こいつ……まだ、足りないです。橘さん……」



 矢沢と一緒に突かれてどこか誇らし気な顔を浮かべていた男性探索者。


 だけど、矢沢の様子に顔色を変えて私に状況を伝え出す。



「うん、分かってるわ」



 そんな探索者の気持ちを汲んで、私は労いの言葉もかけずにもう一撃を与えるため剣を抜き、次この役目を担うことになる仲間を見た。

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