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389話【宮平視点】締まらない

「アカ? お前……なんでここに? 橘さんのところにいかなくていいのか? というか、分断のスキルを破ってきたのか? どうやって?」

「気になるのは分かるけど、質問多すぎ。……全部話すからまずはスキルを解除してって。なーんか娘ちゃんのほうの視線が仲間を見るものに感じなくて、力も入れっぱなしなんだよね」



 京極さんを見ると、奥歯を噛み締めて仇を敵に回している表情を見せていた。


 対象を敵として誤解……どんな姿に見えるかまではこっちで定めていないんだと、一体何に見えていることやら……。


 ま、とにかくその顔が辛そうであるのは変わりないし、俺としてもこんなことしないで済むならそれにこしたことはない。


「信じて……いいのか?」

「私……じゃなくてこれは橘陽葵、主人からの命令って言えば、どう?」

「……。アカが橘さんを使った嘘を言うとは思えないから……そうだね、『誤解』は解こう」



 力を抜いてスキルを解く。


 すると京極さんも気が抜けたのか後ろにもたれるように倒れ始めた。



「おっと……」

「……皆大分消耗してる、か。嫌だったけど、街のことを思えば来て良かったかな。……。にしても……」



 咄嗟に京極さんを受け止める。


 そしてそのままアカとリンドヴルムに注意を向ける。



 悲しそうに、今にもなんでと言いたそうなリンドヴルムと、それに対してギリギリ歯をたてながらイライラするアカ。



 これ、ここにいるのはちょっとやばそうか?



「な、んで止めたの?私は、もう死ぬしか……。せめて娘の手で、最期は愛する子の手で――」

「はぁ……。抑制されていたものが解放された。つけられていた足枷が外れて、本来の強い力が戻ってきた。それを理解、コントロールできないからそんなちんけなものに苦しんでいる。その事にどうして気付けないかな?……境遇に酔って、子供に負担をかけるんじゃなくてさ、自分でどうにかしようって、もっと積極的に前へ進もうとしないと駄目だって。本当に昔からうじうじで欲がなくて……。なんで自分がその階層をあてがわれることができたのか、ちゃんと考えたほうがいいよ」

「……解、放?」



 泣きながら訴えるリンドヴルム、その涙はアカのどこか気の抜けた、さっぱりとした忠告で魔法のように引いていった。


 これから最後の力を振り絞ってどんぱちするんじゃないかと思って身構えていたけど、思わぬ方向に落ち着きそう。



「そう。主のお陰でお前の契約者は無力化されて、その契約自体消えてしまったからね。かなり苦戦して解き放ってやったんだから、ちゃんと見返りはくれないと。ってなわけで……腹の中にあるそれをどうにかできるよう、力のコントロールを思い出させてあげる」



 アカはリンドヴルムの頬に手を当てた。


 するとリンドヴルムの表情は一変、苦しそうな仕草はなりを潜めて視線は一点を見つめ出した。



「これ、本当に大丈夫なのか?余計変になったように思えるけど……」

「ちょっと時間が掛かるだけで問題なし。締まらないけどこれで一件落着さ。それじゃ、この暇な時間で質問に答えるとしようか。……えっと、まずはなんでここにこれたか……だったっけ?」

「あ、ああ。ここの壁はアカでも突破できないはずじゃ?」

「前のレベルだったら、ね。あれだけの敵を倒してくれたからとはいえ、またこうして大きくレベルアップできるとは……。従者であるのがこんなに誇り高く思える日がくるだなんて思わなかったよ」

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