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382話【宮平視点】分かっている

「……見たところ、そっちよりも変わった様子はない。契約の跡はあれど大したモンスターとのものでもない。深い繋がりもない。つまりお前は脅威になりかねない」

「それは……。んー、いざ面と向かって言われると反論できないなぁ。でもまぁ、今は俺自体が脅威かどうかは関係ないんじゃないかな?」



 京極さんから手を離して、大量の魔力消費で疲れた身体を動かす。

 

 剣を抜き、走っていくその先にいる女性、人の姿となったリンドヴルムへと斬りかかる。



 リンドヴルムの身体は竜の時と比べて貧弱になったいると言うが、それでも俺の剣を片手で受け止め、涼しい顔を1つ。


 人の姿と言いつつもその爪は鋭く、尻尾も小さくはなったものの存在している。


 そして、それに気付いた時にはもうそれらによる反撃が始まっていた。


 爪は俺の胸を狙い、尻尾は脚を掴もうとうねる。



 敵は一人なんだけどまるで何人も、何匹ものモンスターをも相手にしているような感覚だ。


 全く、ここまできて大変な運動量だよこりゃ。



「……よく動く。見た目以上に若いな」

「見た目以上は余計だね。これでもおじさんって呼ばれないよう頑張ってるんだからさ!!」



 受け止められた剣を引いて踊るように反撃をかわす。


 無理に攻めはしない。

 だって俺の役目はこいつに京極さんの一撃を当てることで、この剣で切り裂くことじゃない。


 あくまで僅かな隙を作ってやる。

 ただそれだけ。


 とはいえ、これが中々難しい。


 さっきの拘束みたいなのが俺だけでも使えればいいんだけど……それは不可能。


 それに魔力にも限界がある。


 だとすれば……。



「誤解……」

「目眩ましか、小賢しいな」



 まずは視界を奪う。


 ここまでの戦闘からリンドヴルムというか、鞍には気配とか魔力で敵の位置を把握する能力がないはず。


 だとすれば何をするにしてもまずは、この空気を濁らせてやるのが無難な選択だ。


 空気の色を変えるだけなら魔力もそんなに使わないし、というかそもそも対象が空気って時点で楽ってのは分かっている……。



「そうだ。分かっているんだ……」

「ふっ……。その声量であれば気付かないとでも?」



 小さくも確かな切れ味の鎌鼬が濁った空気を切り裂きながら俺を襲う。


 少し距離をとってはいたが、恐ろしく正確なそれは深く、溢れた血は瞬く間に服を赤に染めていく。


 痛みで叫びそうになるがぐっと堪え、俺はこれを機と見た。



 だからもう一度、今度は心の内で呟き誤解を発動させる。



「ふふ、もう靄は出せないようだな」

「お陰さまで。いや、参った参ったこれじゃもう動けないよ」



剣を握ったままの腕でもう片方の腕、服の袖を掴みあえてにこやかに振る舞う。



「これじゃあもう降参するしかないかな」

「賢明だな。だが今更命乞いをしたところで何も変わらな……」



 どこか楽し気に聞こえるリンドヴルムの声が唐突に切れた。


 さらにその顔は訝しげに俺をにらみ、違和感に気付く。



「お前の腕……確かに手応えはあった。それなのにその出欠量はおかしい……」

「いやいや、そんなことはないって! だったらほら! もう少し近づいて見るかい?」

「それにその血痕……。かははははは!! なるほどなるほど!! そういえばお前はそれが得意だったな!だがダメージのせいか、今度の奇襲は粗末!」



 勢い良く振り返るリンドヴルム。

 その視線の先にはもう一人、血で赤くなった腕をかざし飛び込んでくる俺の姿があった。

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