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380話【宮平視点】耳

「――お……おおおおおおおおおおおおっ!!」

「お、親父……って、受け止めた?」



 大竜巻は親父の腹にその先端、顔の部分を押しつけ、噛みついた。


 だけど親父の服は破れても、腹自体は中々に食いちぎられない。


 それどころか親父は竜巻の顔部分を掴み、押し返そうとしている。


 親父には、宮平家の人間には物理攻撃に特化したスキルの発現はなかったはずだけど……もしかしてこっそりとレベルを上げていた?


 だとしても、これだけのことができるなんて想像を遥かに上回っている。


 状況は思っていたよりも良い、けど周りの雰囲気や異様な光景が引っ掛かりすぎて純粋に喜んだり、応援することが難しい。


 このままだと、ダメージを受ける以上にまずいことになるじゃないか?



「お、俺たち……は、元々地上で、それなりの身分で……まだ……ここに来るよりももっと前、には、政府との距離感も、近かった。そして、いいように利用された。その1つがこれ……ひた隠しにしてきた、宮平家の秘密の1つ」



 リンドヴルムが生み出した竜巻を受けながらも、思ったよりも余裕があったようで親父は途切れ途切れに言葉を紡いだ。


 そういえば親父の口から宮平家の詳しい歴史を聞いたことはなかった、か。

 ま、洗脳下にあったわけだから当たり前なんだけど。



 それで、多分この話を親父も大分時間が経って思い出したってことなんだろうな。


 地上の政府との繋がり……それがあるのは分かっていたけど、実際に知らされると背筋が凍る思いだ。


 だってこれだけ話題に出て、それなりのポジションにいる神宮と戦っていてもその規模感や程度が全く読めなくて、何をされているのか、皆目見当がつかないから。



 ただこんな時に伝えるってことは、もしかすると親父の言う『これ』、つまりリンドヴルムの竜巻にさえ負けない身体はまだ俺には現れない、現すことができないものであって……まさかそれを遺言にしようってんじゃないだろうな?



「さっき言ったよな?死なないって……。だから、その言葉は――」



 子供みたいな反抗をして、親父の言葉を遮るフリをしようと両手で耳を覆った。


 すると耳の先がやや尖っているような、そんな触感が伝わってきた。


 こんなの……前までは、今朝だってなってなかった。



「気付いたか? でも、大丈夫。お前は、そこまで。不幸中の幸いで、互いに距離があった、から……。少し、見た目が変わっただけ……影響はほぼ、ない。速効性のあるもんじゃないのは、分かっている」

「これって一体……おい!親父は、お父さんは大丈夫――」



 親父の頭に視線を移すと、そこには長い髪の束から大きくはみ出た耳があった。


 人のそれとしては異常と言える耳。

 だけど俺はこれを見たことがある。



「神、様……?ま、さか宮平家の人間って……。いや、違う。だとすれば扱いは最初からぞんざいだったはず。……まさか利用するって、神様……異世界人を作ろうとしたのか?」



 ダンジョンは資源が豊富で、地上の人間がこれを欲しがっているのは間違いない。


 だったら自分たちで都合の良いものを、もっと良いものをなんて考えが湧いたっておかしくはない。


 だけど、だからって同じ人を、懇意にしていたひとたちをこんな実験体にこっそりと変えるなんて……。


 そりゃあ、余計に俺たちをこの中に閉じ込めたかっただろうさ。

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