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378【宮平視点】勇敢じゃない

「何かくる……。枷の数を減らしスキル、また魔法に干渉する力を強める準備を!! 魔力の足りないものは40秒後に備えて1度離脱! 水分を含んだ後、全力で魔力を練り上げろ!」



 リンドヴルムの異変に最も早く気付いたのは親父だった。


 鬼気迫るその声のおかげで、その場の緊張感が高まっていくのが容易に見てとれる。



「すぐ加勢に行きたいところだけど……。京極さん、準備はどんな感じですか?」



 ふるふると首を横に振る京極さん。


 ちょっと可愛らしいと一瞬思っちゃったけど、すぐに切り替えて俺は俺で今の状況を見る。


 空気を吸い込み続ける京極さんは話す暇もないくらいに胸を膨らませ続けている。


 その勢いは思っていたよりも早い。


 このままだと俺の『誤解』による容量の増加を受けているとはいえ、肺が弾けかねない。


 だから準備する京極さんと同じく、俺も常にスキルでそれを増やし続けなければいけない。



 ……つまり、俺もここを動くことが出来ないということで加勢は出来そうにない、か。



「……」

「……」



 チラッと親父に視線を送ると目が合い、さっとそらされた。


 言葉は交わしていないけど、こっちの状況は分かってくれたようで、親父もここぞとばかりに水を取り出してあっという間にペットボトルを空にした。


 その背中には俺に任せろと書いてあるように見える。



「全く、頑固親父め。あとから助けて欲しいって言ってもどうにもならないぞ。……だから、頑張れよ」



「――ふ……。敵攻撃まで残り僅か!! 準備時間到達!! ……強漂白、開始!! 魔力を1滴でも多く絞り出せ!! さもなくば我々に生はないと思え!!」



 少しだけ笑い顔を見せると、親父は大声で命令を送った。


 そしてそれを合図に棘の内側が再び白く、そして今度は濁りドロッとしたなにかが棘に付着し始めた。



 漂白効果の強化に伴って、それらに粘着性が帯びたのだろう。



 なるほど確かにこっちの方がリンドヴルムや魔法なんかにもベッタリとくっついて綺麗にしてくれそうだな。


 というか、強力すぎて地面とか棘の部分が抉れ始めてるような……これ、リンドヴルムを殺しちゃうとかないよね?


 それはそれで大問題なんだけど――



 ――ぴと。



「これ……」



 降って湧いた心配に頭を悩ませようとした時、俺は頬に何か当たった感触を受け、そっと手を伸ばした。


 振れると粘っこくて、白くて、でも擦ると消える。


 人によっては霧程度だと無視してしまうほど細かくなったこれは……漂白の効果があると誤解を受けたはずのそれ。


 嫌な予感を感じるよりも先に、親父たちの拘束が、壁が突破されることを伝えられる。


 それは俺だけじゃなく、親父や他の連中も同じようで全員目を見開いている。


 後退しないのは勇敢だからじゃない。

 これから起きることに対する恐怖心で動けないだけだ。


 まずい。

 無防備に殺されかねない。



「皆――」

「総員撤退!! それができないものは頭を抱え込み伏せろ!!」



 静まり返ってしまった空気を親父が切り裂いた。


 そしてそんな親父の足はなぜか前に向かって、敵に向かって動き出していた。

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