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369話【宮平視点】簡単

 ――ビダン゛っ!!



 鞭で叩かれるよりも低いが、階層全体に広がるんじゃないかと思わせるその音は、しっかり見て確認しなくとも俺の身体に大ダメージを与えてくれたことが分かる。


 そして至るところから一斉に視線を浴びて俺の身体は地面に叩きつけられた。


 口から血が出てはいるけど、声は出ていない。



「――宮平さん!!」



 京極さんの大声……それに宮平の一族、一同のざわつく声が俺の耳にも聞こえた。


 京極さんに至っては泣きそうにも聞こえる。


 多分自分のせいだって思って、自戒の念に苛まれているんだろう。



 こんな顔を女の子にさせたってなればそれはそれで苺に怒られかねない。


 それに、それは俺のポリシーに反する。



「だから、種明かしは早々にさせてもらうことにするよ。この距離じゃもうどうにもできないだろうから、問題もないしね」



 パチンと指を鳴らすと同時に、地面に転がっていた俺の身体は途端に透明になってその辺の景色と同化した。



「これって……」

「京極さんの思った通りです」



 ポカンと口をあける可愛らしい顔の京極さんに向かって、俺はとびきりのドヤ顔を披露しながら鞍を掴んだ。


 そう、俺のスキルは強化されたことで対象により強く、明確なイメージを持たせて、精巧に具現化させることができるようになっていた。


 実を言うと自分の分身をこうして作ったのはもう十数回目。


 苺のおやつを間違って食べて怒りを買ったときとか、橘さんをからかい過ぎて大変なことになったときとか、なぜか山吹君と組手をさせられたときとか……何度この分身を身代わりにしたことか。



「まぁ一部は俺が悪いんだけど……。とにかく、もうそろそろ騙すのには慣れてきたってことです。しかも俺はあなたと……」



 鞍に力を込めてそれを引き剥がそうとしながら、リンドヴルムに話しかけていると、唐突に強い風が吹き始めた。


 身体をバタつかせたり適当に攻撃をせず、最低限の労力で確実に邪魔者を剥がそうとする辺り、向こうのコントロール下にありながら竜本来の品というか、立ち居振舞いは削がれていないんだなって思う。


 それに、さっき俺の身代わりが風でろくに動けなくなったことを思っての行動だろうから、なんだかんだ冷静さも残っている。


 ただ、その風の中俺だけがこうしてここにもう着することができている……その意味を考えるまでには至っていないみたいだ。



「!?」

「相性が大分いいみたいなんですよ。これも会長と一緒に仕事をすることが多かったから、或いは風魔法やスキルを真似てみた結果ですかね?」



 風を読んで、まるでそこに物体があるかのようにそっと触れる。


 次に魔法を使うときの要領で魔力を流して、軌道を剃らす。


 特にスキルとして独立されているわけじゃないこのテクニックは、気付いたときには可能になっていた。


 でもここまで大きな流れに干渉したのは初めてで、さっきの尻尾攻撃による風圧に触れたときは少しだけ不安もあった。


 でもやってみれば簡単簡単。


 消し去るわけでもなく、流すだけなんだから風の盾を作るよりも遥かに楽。


 それに鞍も……でかいだけで案外簡単に外せそうだ。


 柔らかくて、俺でも断ち切れる。



「……いやぁ、あなたが優秀で良かった。そのお陰でこんなに早く楽に仕事が終わらせましたよ」



 そういいながら俺は鞍の紐部分を切って、その身体から外そうとした。


 すると鞍からなにか仰々しいものを感じて、俺は途端に目を見開くことになった。

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