363話【苺視点】合流
「――あれ? 俺今馬鹿にされたような……。なんだろう勝ったばっかりだってのに、この場の盛り下がった感じは……。いや、でもそれが逆に落ち着きやがる。やられ過ぎて頭がおかしくなっちまったか?」
「おかしくない。むしろ凄く冷静に考えれて驚いた。ね、メロリンもそう思うでしょ?」
「きゅうっ!」
「うんうん、そうだよね。もっと熱血馬鹿だと思ってたよね」
「あ、あのなぁ……苺と、メロリン? だったか? こんだけ頑張ったんだから労いの言葉でも……って急に現れた!!声も今ははっきりして……こ、これ、誰のスキルだ!とんでもねえな!」
「……案外元気。うるさいくらい」
「きゅぅ……」
神宮の気配を感じないから、メロリンにスキルを解いてもらうと、ぶっきーはもう、超うるさい。
ダメージからして死んじゃってもおかしくなさそうなのに……竜だから?そういえばハチも怪我すぐ治ってたっけ。
「とはいえ、すぐに全線復帰は無理そうじゃない。一旦降りて治療しましょうか。ご両親も心配だしね」
「うん。べー姉ありがとう」
「ベアトリーチェ……。そうか、冷たいのはその翼か……俺には勝てないけどそれでもすげえかっこいいじゃねえか」
「一言余計。でも、そうね」
べー姉は珍しくぶっきーに反論せず、ちょっと疲れた声を出した。
ぶっきーは飛行能力もある、けど今はそれがダメージによって削られていて、べー姉が両足で支えてる……。
メロリンと私と、地上と繋がるこの管……。
あ、もしかして限界?
「ちょっと、まずいかも。えっとえっと、管が途切れるイメージをして……うん。消えた。これでどうべー姉――」
「ありがとう。でも、魔力負担が減っても、貯まった乳酸はなかなか……ね。ごめんなさい、皆ちょっと痛いの我慢して」
どんどんと下降していくべー姉。
勢いは増して身体がひゅんってなる。
「落ちる……。ぶっきークッション。べー姉とメロリンもこっちきて」
氷の翼を解いたべー姉の手とわたわたするメロリンを引っ張ってぶっきーにできるだけ寄る。
ダメージが大きいのは分かる。
でもまだちょっとは飛べそうだし、この硬い鱗ならきっと大丈夫。
「おいおいおいおい!! お前ら助けに来てくれたんじゃねえのかよ!!」
「自信満々だったのに、私たちいないと勝てなかった。だから、ペナルティはこれくらいで許す」
「そうね、むしろ感謝してほしいくらい」
「きゅぅ!」
「いやそれは悪いと思ってるがな、こんな時に冗談は……いや、俺も男だどーんと任せろ」
ぶっきーは必死に翼を動かして落下速度を遅くする。
それでもこのままだと尻餅ついて、痛いかも――
「ってごめんやっぱ無理」
ぶっきーの弱音……翼が止まった。また急落下。
本当にさっきまで怖いと思ってたモンスターだとは思えない。
でも、こんな時でもちょっと面白い。
それに、2人の姿が見えたから、もう多分安心。
「――勝者に勝者の顔をさせてやるくらいは、今の私たちでもできるさ」
――どん。
衝突音にしてはやけに静かな、軽い音。
受け止められて衝撃はほとんどないみたい。
お母さんたち、凄い。
これがオーガの本来の力――
「――ふ、ふふ……まだ、まだ俺は」




